川崎重工業の2026年3月期の第3四半期の通期業績は、前年同期比で増収・増益で、受注、売上、利益のすべての指標で過去最高を記録した。受注高が前年同期比で861億円上回る1兆9081億円、売上収益は同1540億円上回る1兆5614億円、事業利益は同33億円上回る824億円で営業利益率が5.3%、親会社の所有者に帰属する四半期利益では216億円上回る658億円で利益率が4.2%であった。二輪関連のパワースポーツ事業は減益で米国関税と競争激化が直撃、通期計画も下方修正した。為替レート平均は147.55円。
事業利益の通期計画1450億円に対する進捗率は57%(前年同期55%)と順調とした。好調な航空宇宙システム事業やエネルギーソリューション&マリン(ES&M)が全体をけん引。一方、二輪を含むパワースポーツ&エンジン(PS&E)は米国の関税政策によるコスト増や、米国市場での競争激化により採算が悪化し減益となった。
セグメント別では、航空宇宙システムが防衛省向けや民間航空エンジンの増加により増収増益。ES&Mもエネルギーや船舶海洋分野の好調を背景に大幅な増益を確保した。車両事業はニューヨーク市交通局向け地下鉄車両の受注などで受注高が大きく伸び、増収増益となった。精密機械・ロボットも改善傾向を示した。
一方、PS&Eは売上こそ増加したものの、関税コストの上昇や価格競争の激化が響き、事業利益は前年同期比224億円減の63億円に落ち込んだ。
損益面では、円安進行に伴う為替差益の計上により、税引前利益は888億円(前年同期比244億円増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は658億円(同216億円増)と大幅増益となった。
二輪を含むPS&E事業は増収ながら大幅減益となった。販売台数の増加で売上収益は前年同期比349億円増加の4522億円と伸長したものの、事業利益は同224億円減の63億円に落ち込んだ。減益主因として、米国の関税政策によるコスト上昇と、北米パワースポーツ市場における競争環境の激化。米国関税政策による通期のコスト押し下げ要因は全社で183億円規模を見込むが、その大半をPS&Eが占める。加えて、在庫調整局面が続く米国市場では販売インセンティブや価格対応が重荷となり、採算性が悪化した。
一方で、販売面では一定の底堅さもみられる。売上変動要因では販売台数増がプラス寄与しており、需要そのものが急減している状況ではないとする。為替面では円安効果も一定の下支えとなったが、関税コストや競争激化によるマージン低下を補うには至っていない。
卸売の販売台数は、日本が前年同期比7000台増加の2万6000台、北米が同9000台減少し7万台、欧州は同1000台増加し4万8000台、フィリピンが同1満4000台増加の14万9000台、インドネシアは同3000台減少し1万2000台、中南米が3000台増加の1万1000台、その他が2000台減少し1万8000台であった。
◆2026年3月期の通期見通し
通期業績予想については、事業利益を過去最高の1,450億円で据え置いた。一方、為替差益の実現を反映し、純利益は従来予想から80億円引き上げ、900億円(前期比20億円増)とし、過去最高を更新する見通しだ。
米国の関税政策による影響は通期で183億円のコスト増を見込むが、価格転嫁や固定費削減、円安効果などで吸収する方針。航空宇宙分野では民間機需要の回復や防衛力強化を背景に市場拡大が続く見通しで、成長事業が全体の収益を下支えする構図が鮮明になっている。
全社ベースでは航空宇宙やエネルギー分野が好調を維持し、純利益は過去最高更新を見込むが、二輪・パワースポーツ事業にとっては構造転換を迫られる局面だ。市場環境の変化をどう乗り越えるか、2026年度以降の収益回復シナリオが注目される。
PS&Eの通期見通しは下方修正。2025年度の事業利益予想は従来の300億円から205億円へと95億円引き下げた。売上収益は6600億円で据え置く一方、利益面では米国市場での価格競争や関税影響を織り込んだ。価格適正化や固定費削減、円安効果などで影響の吸収を図る方針だが、短期的には収益回復に時間を要する可能性がある。
PS&E事業を担うカワサキモータースでは、2025年4月に伊藤忠商事へ株式20%を譲渡済み。資本提携による販売ネットワークや調達面でのシナジー創出が今後の焦点となる。北米依存度の高い事業構造の中で、収益安定化に向けた市場ポートフォリオの再構築も課題となる。
足元の北米市場は、高金利環境や消費者マインドの変動を背景に選別色が強まっている。メーカー間の競争は一段と激しく、電動化や新カテゴリー提案など付加価値戦略の成否が中期的な分水嶺となる。




