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ヤマハ発動機 Z世代との接点創出  「謎とめぐる記憶の旅」で企業ブランドへの理解促す

ヤマハ発動機 Z世代との接点創出  「謎とめぐる記憶の旅」で企業ブランドへの理解促す

2026.09.29

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ヤマハ発動機 Z世代との接点創出  「謎とめぐる記憶の旅」で企業ブランドへの理解促す

二輪業界では若者へバイクの魅力を伝え、新たなユーザーとの接点をつくる活動が広がっている。ヤマハ発動機は7月25日から10月30日までの期間、Z世代に向けた企画「謎とめぐる記憶の旅」と題して、同社コミュニケーションプラザ(静岡県)で実施。若者へヤマハ発動機ブランドの認知向上への取り組みの一環で、バイクだけでなく「ヤマハ発動機」という企業ブランドそのものを若者に知ってもらうことを狙った活動を展開。オートバイ流通新聞では「謎とめぐる記憶の旅」を担当する、同社のブランド統括部ブランド推進部の企画推進グループ植木悠治さんに、同企画で若者が参加しやすい工夫などについて取材した。

 

ヤマハ発動機が、若年層との接点づくりを強化している。二輪車市場における購入者の高齢化に加え、若者の間で「ヤマハ発動機がバイクメーカーであることを知らない」層が増えているという現状認識だ。こうした背景よりヤマハ発動機は自社企業ミュージアムであるコミュニケーションプラザで展開する「謎とめぐる記憶の旅」の展開を始めたとしている。

 

■バイクの前に「ヤマハ発動機を知ってもらう」

今回の企画を考える背景には、同社が認識している若者のブランド認知に対する危機感が挙げられる。担当した植木さんによると、市場調査で浮かび上がったことは「10から20代の若者のうち、ヤマハ発動機がバイクメーカーであることを知らない層が、年々増加している」という。

 

二輪車市場の縮小、とりわけ原付の減少に加え、現在の二輪車全体の購入者は50代以上が中心で、乗り換え需要が多い一方、新規需要が充分に高まっていない。こうした状況を踏まえれば、将来のユーザー候補となる若年層に、まずヤマハ発動機という存在を知ってもらうことが重要ということだ。

 

調査結果を背景に「“バイクに乗ってもらう”ためには、その前段として“バイクを知ってもらう”必要があります。そして、そのさらに前には“バイクメーカーであるヤマハ発動機を知ってもらう”」という段階があるとしている。

 

同社が今回、車両販売を直接的に訴求するのではなく、企業ミュージアムを舞台にした体験型コンテンツを選んだ背景には、こうした考え方がある。

 

企画を担当したブランドブランド統括部ブランド推進部の企画推進グループ植木悠治さん

 

■若者の「トキ消費」に着目

同社が企画を検討する際に、若者の消費行動の変化を挙げており、若者に受け入れてもらえる活動は何かということに着目した。植木さんは「1980年代には商品を所有することに価値を見いだす『モノ消費』が中心となり、1990年代以降は誰と何をするかという体験を重視する『コト消費』が広がりました。そして現在は“その場”“その時”の瞬間にしか得られない体験を重視する『トキ消費』へと変化していることが挙げられます」と市場やユーザー意識の変化を挙げている。

 

また、「若者の消費行動について調査する中で、ファッションや推し活、スポーツ観戦、映画鑑賞、イベント参加などへの関心が高いことが分かり、『その場、その時の体験』を重視する傾向が見えてきました。そこで、若者が興味を持ちやすい、体験やその場といった『ゲーム』と『謎解き』を組み合わせ、ヤマハ発動機との接触時間を増やす企画を考えました」などと企画実施の背景を挙げている。

 

植木さんは、謎解きについて「参加者の方が自ら考え、行動しながら没入できる性質から、その時、その場所でしか味わえない『トキ消費』に当てはまる」と説明している。

 

同社が目指したのは、企業側からの情報を一方的に発信するのではなく、参加者自身が動き、考え、体験する中でヤマハ発動機を知ってもらうことを重要視したことを強調する。

 

 

■謎解きの中に「ヤマハ発動機」を組み込む

7月25日から10月30日まで実施する「謎とめぐる記憶の旅」では、参加者が印刷物の謎解きキットを手に、スマートフォンからLINEを登録。LINEで送られてくる物語やヒントを手掛かりに、コミュニケーションプラザ内を巡りながら問題を解いていくもの。

 

 

物語の中の主人公は、人生の目標が定まっていない大学生になったばかりの女性。参加者自身が主人公になったような感覚で、「記憶」をめぐる物語を追いながら謎を解いていく設定になっている。答えが分かってしまうため、謎解きの詳細はここでは紹介できないが、予想を超える内容といえるだろう。

 

館内にはヤマハ発動機の製品や歴史、事業に関する展示があり、問題と関連する展示品を探したり、LINEで送られてくる解説を読み込んだりしながら答えを導き出すもの。謎解きが「ヤマハを知るための入口」になっている。

 

取り上げられるのは二輪車だけではない。マリン製品や産業用ロボットなど、同社が展開する幅広い事業にも触れる構成としている。さらに、企業としての歴史も物語に組みこんだとしている。

 

楽器製造の技術を生かして戦時中には戦闘機のプロペラを製造した歴史や、1955年に日本楽器製造の浜名工場でモーターサイクル第1号機「YA-1」の生産に着手した歴史なども、謎解きを通じて知ることができる。

 

企画制作は、ストーリーのある謎解きイベントや脱出ゲームなどを手掛けるピントクル㈱の協力を得て制作したという。

 

 

■「押し付けない」企業PR

企画で同社が特に気を配ったのが、企業PRと謎解きのバランスとしている。企業の歴史や製品について説明しようとすれば、盛り込む情報量は多くなる。しかし、それが前面に出すぎれば、参加者にとっては単なる企業PRとして受け止められ、参加者がしらけてしまう。

 

こうした点を考慮して、植木さんは「ヤマハの説明を押し付けすぎず、謎解きとのバランスを取ることに苦労しました」と述べている。「問題そのものにヤマハ発動機の製品や歴史、事業を組み込み、参加者が謎を解くために自然と展示する製品などをみて理解してもらえる仕組みにした」などとしている。「若者向けのストーリーづくりでは“共感できること”“押し付けがましくないこと”などを重視しました。参加者が物語の主人公になりきり、自分ごととして体験できるよう工夫を凝らしました」と企画での設定の難しさや苦労を挙げている。

 

さらに「今の若者はSNSなどによって情報や選択肢が多い一方で、自分ごと化できないものには興味を持ってもらえない」とも指摘する。

 

だからこそ、企業からヤマハ発動機はこういう会社であることを一方的に説明するのではなく、参加者自身が動いて体験しながら、自然とヤマハ発動機は、こういう会社なんだ”と感じてもらうことを重視したとしている。

 

謎解きの舞台となるコミュニケーションプラザ内

 

 

■参加者は、20代が最多

7月25日に始まった企画での参加者数について、植木さんは「多くの方にご参加いただいています。年代では20代が最も多く、10代と30代が約同数の方で続いています」と述べている。

 

また、男女の比率については「男性が約55%、女性は約45%とほぼ半々となっています。通常のバイクイベントでは男性や比較的年齢の高い層が中心となることが多い中、今回は若年層、特に女性の参加割合も高く、想定したターゲットに近いご参加となっています」と同企画の参加状況を明かしている。

 

謎解きの所要時間は約60~90分。参加者には、単に謎を解いて終わるのではなく、物語を通じて将来的に前向きな気持ちになってもらうことも狙っている。

 

謎解きでは「参加者が主人公になりきって謎を解き、達成感を味わってほしい」としており、その上で「ヤマハ発動機の製品などを通じて同社の魅力や認知を高めてもらいたい」としている。

 

同社にとっては、今回の参加者がすぐにバイクを購入することだけが目的ではない。いつかバイクに乗ってみたい。ヤマハで仕事をしてみたいと思う切っ掛けになれば、さらに良いといった、長期的な視点で若者との接点づくりに取り組んでいる点も注目される。

 

 

■創業者の思いも若者へ

今回の活動には、ヤマハ発動機が創業以来、大切にしてきた企業としての価値観を若い世代へ伝える意味もある。

 

同社が若年層へのブランド発信で意識しているのが、創業者で初代社長の川上源一氏の「人生を楽しむ意欲を掻き立て、挑戦を後押しする:生活を楽しむことを拡げたい」といった考え方だ。ヤマハ発動機の主力製品の二輪車は、生活必需品とはいいがたい。しかし、創業者の思いは現在も引き継がれており、同社製品を所有したり利用したりすることで生活を楽しく、豊かにする製品づくりを行ってきた。植木さんは「“遊”はヤマハ発動機としての根本であり、大切にしている部分だ」と説明する。

 

今回の謎解きも、そうした企業の根底にある「楽しむ」という価値観を、若者に伝える方法の一つといえる。製品そのものを前面に出すのではなく、物語や謎解きを楽しんでもらい、その中にヤマハ発動機の商品、事業、歴史、企業の考え方を織りこんでいる。

 

「遊び」を入り口として、ユーザー特に若者にブランドへの理解を促すという点では、同社が大切にしてきた企業姿勢ともつながっている。

 

 

 

■若者との接点を「次」につなげる

今回の企画は、世界市場へそのまま展開することは、長期的な企画であり、コミュニケーションプラザのような展示スペースも必要となるため難しいとしている。一方で同社は、今後もこうした若者への企画を通じてブランド認知を積極的に広げていく考えを示している。

 

二輪市場では、ユーザーの高齢化と新規需要の伸び悩みが課題となっている。自工会の調査でも、若年層の二輪車購入割合は低く、今後の需要拡大には新たなターゲットへの訴求が必要とされている。

 

メーカー各社はすでに、車両の展示だけでなく、イベント、レンタル、アプリ、スクールなどを通じて「バイクを楽しむ体験」を若者に伝える活動を進めている。ヤマハ発動機自身も、東京や大阪のモーターサイクルショーで「125から広がるバイクライフ」を掲げ、若い世代への接点拡大を進めてきた。

 

今回の「謎とめぐる記憶の旅」は、その延長線上にありながら、さらに一歩踏み込んだ取り組みといえる。

 

バイクの魅力を伝えるだけではなく、まず「ヤマハ発動機」という企業を知ってもらう。そして、製品や歴史、企業として大切にしてきた価値観を体験の中で知ってもらう。

 

若者にとっては一つの「謎解きイベント」でも、ヤマハ発動機にとっては将来のユーザー、ファン、さらには働き手となる可能性のある世代との重要な接点づくりである。

 

二輪車市場の次世代を考える上で、メーカーが若者とのコミュニケーションをどのように作り、変えていくのか。「バイクを売る」だけではなく、「バイクやメーカーを知ってもらい、好きになってもらう」ためのブランド活動が、今後さらに一層重要になりそうだ。

 

コミュニケーションプラザ入口フロアではデジタルサイネージで「謎とめぐる記憶の旅」を告知

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