ヤマハ発動機はイタリア・ミラノで開催される欧州最大級の二輪車展示会「EICMA 2026」に、新たなグローバルブランドシリーズ「RW」の新型モデル「RW700」「RW350」と、125ccクラス相当の電動スクーター「NMAX E」「XENTER E」の計4モデルを発表。異なるカテゴリーの新型車を通じて、日常の移動からレジャーまで幅広い二輪車の利用価値を提案する。RWシリーズは日本で2027年秋以降の発売を予定し、NMAX Eは2027年の国内発売を計画している。
アドベンチャースクーターという新たなカテゴリーの開拓と、電動スクーターの商品ラインアップを拡充した。単なる移動手段としての機能にとどまらず、移動そのものを楽しむ体験や、日常生活の快適性を高めることを開発の方向性に掲げている。
新ブランドシリーズ「RW」は、日常と非日常をシームレスにつなぐ新しいモビリティ体験を提案するもの。街中での快適な移動性や扱いやすさを確保しながら、未舗装路にも対応できる走破性を備え、普段の移動ルートから一歩踏み出したくなるような自由度を追求した。ライディングポジションの自由度や車体のホールド性、自然な足つき性にも配慮し、日常使いとレジャーの双方に対応する機能的なデザインを採用した。また、植物由来原料を使用したバイオエンジニアリングプラスチック「DURABIO」やリサイクルポリプロピレン材を採用し、環境負荷低減にも取り組む。
上位モデルとなる「RW700」は、689ccの水冷2気筒CP2エンジンを搭載。軽量な車体と、クラッチレバーやシフトペダルの操作を不要とするスクーター初採用の「Y-AMT(ヤマハ・オートメーテッド・マニュアル・トランスミッション)」を組み合わせた。自動変速のATモードに加え、手元でシフト操作を楽しめるMTモードを選択できる。シフト操作とリアブレーキ操作を手元に集約することで、未舗装路や低速走行時の扱いやすさも高めた。

RW700

RW350
車体には新設計のバックボーン型高張力鋼管フレームを採用。最低地上高170mmを確保し、フロントには41mmの倒立フォーク、リアにはボトムリンク式モノショックを装備する。クロススポークホイールやピレリ製タイヤ「スコーピオンラリーSTR」により、舗装路と未舗装路の双方での走行性能を追求した。走行モードを選択できる新設計の「YRC(ヤマハライドコントロール)」やクルーズコントロールも備える。さらに、上位仕様の「RW700 EXPLORE」も展示し、グリップウォーマーやヒートシート、フロントサスペンション調整機構などを標準装備する。
「RW350」は327ccの新開発水冷単気筒エンジンを搭載する。最大の特徴は、エンジンをフレームに直接固定し、CVTユニットのみを揺動させる独自機構「Yamaha Dynamic Ride」を新開発したこと。車体剛性の向上とバネ下重量の低減を図るとともに、4軸バランサー機構との組み合わせでエンジン振動を抑え、ハンドリング性能と乗り心地の両立を目指した。最低地上高は185mmを確保し、ダイヤモンド型高張力鋼管フレームや37mm倒立フロントフォーク、ダンロップ製ブロック調タイヤを採用する。中型クラスのスクーターとして初めて電子制御スロットル「YCC-T」や5インチTFTメーターを搭載し、スマートフォンアプリ「Y-Connect」や二輪ナビアプリ「Garmin StreetCross」との連携にも対応する。

一方、電動スクーターの「NMAX E」「XENTER E」は、125ccクラス相当の新型モデル。同社が掲げる「乗るたびに、自分らしくいられる。乗るたびに、自分に誇れる選択だと実感できる」という価値提案の下、日常の移動における快適性や利便性と、EVならではの走行特性を組み合わせた。
両モデルには新開発の軽量・コンパクトな駆動ユニット「eAxle」と、容量3.5kWhの車両固定式リチウムイオンバッテリーを搭載する。航続距離はWMTCモード値で、NMAX Eが104km、XENTER Eが108km。新設計の車載充電器により、自宅での充電に加え、四輪車用の公共充電ステーションでの充電にも対応する。走行モードはS・T・Eの3種類を設定し、走行環境やライダーの好みに応じて選択できる。
「NMAX E」は、ガソリンエンジンモデル「NMAX」の走行性能や上質なスタイリング、使い勝手を受け継ぎながら、EV技術を融合した次世代プレミアムアーバンスポーツスクーターとして開発。バッテリーやモーターを車体中央に配置した新設計のバックボーン型フレームにより、低重心化とマスの集中化を図った。5インチTFTメーターには専用アプリ「Yamaha Motor On」と連携するコネクテッド機能を備え、ナビゲーションや車両位置、走行距離、バッテリー残量などを確認できる。リバース機能やフルフェイスヘルメットを収納できるシート下スペースも設け、日常の利便性を確保した。

NMAX E

XENTER E
「XENTER E」は、前後16インチの大径ホイールを採用したモデル。大径ホイールならではの安定性や快適性に、EV特有の滑らかな加速特性を組み合わせた。新設計のアンダーボーン型フレームによって強度と剛性を高めながら軽量化を図り、バッテリーとモーターの配置も最適化。石畳などの荒れた路面でも安定したハンドリングと軽快な走行性を実現する。NMAX Eと同様に、5インチTFTメーターやコネクテッド機能、リバース機能などを備える。
なお、両電動モデルの生産はベトナムのYamaha Motor Vietnam Co., Ltd.が担う。ヤマハ発動機は「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」に基づき、2050年までに事業活動を含むサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目指しており、今回の電動モデル投入もその取り組みの一環となる。
今回の4モデルの出展からは、ヤマハ発動機が二輪車市場の需要変化を見据え、商品カテゴリーと動力源の両面で選択肢を広げようとする姿勢がうかがえる。RWシリーズは、スクーターの利便性にアドベンチャーモデルの走破性や趣味性を加えることで、従来の日常でのスクーター利用者だけでなく、レジャー需要や新たな二輪車ユーザーの獲得を狙う商品といえる。一方、NMAX EとXENTER Eは、通勤・通学など日常の移動を主な用途とし、EVの実用性と利便性を具体的な商品として提示するもの。
国内市場では、RWシリーズの発売が2027年秋以降、NMAX Eが2027年に予定されている。今後は、実際の国内価格や仕様、販売計画に加え、充電環境や航続距離に対するユーザーの評価が普及の鍵となる。幅広い用途に対応する新型車の投入が、国内二輪車市場の需要喚起や販売店における新たな顧客層の開拓につながるか注目される。



