ヤマハ発動機は2月10日、2024年までの3カ年の「新中期経営計画」を発表した。「感動創造企業」を目的に、2030年に向けて「Art for Human Possibilities~人はもっと幸せになれる~」という長期ビジョンを掲げ、成長戦略と基盤強化を進める。新中期経営計画では、主にサステナビリティへの対応を強化。 二輪車やマリン、RVなどの『「コア事業の稼ぐ力」を強め、サステナブルな社会に貢献する「新規事業・成長事業に投資」し、「デジタルと共創の加速」で成長性を高める』ことを基本方針として、企業価値向上を目指す。
事業ポートフォリオとして新中期経営計画では、売上高成長率と投下資本利益率により、事業の位置づけを明確化し、経営資源を適正に配分するポートフォリオマネジメントを進める。戦略の事業領域とで4つの領域を設定。足元の発電機などの「構造改革事業」、二輪車やマリンの「コア事業」に加え、「新規事業」と「成長事業」を戦略事業領域として、将来のコア事業に育てるために経営資源を積極的に配分していくとしている。
戦略的な事業領域では「新規事業」として長期ビジョンでは、社会課題へのヤマハらしい取り組み「Rethinking Solution」を注力領域の1つに挙げた。当社がこれまで培った技術・知見とパートナーとの共創活動で、ヤマハらしい新価値を創造し、社会課題解決に貢献する事業開発を加速させる。モビリティサービスでは、インド、ナイジェリアに新会社を設立し、現地協業でアセットマネジメント事業を拡大。低速自動走行ではモノ輸送の事業化と、ヒト輸送の事業性の検証を進める。特定条件下での自動運転技術の確立により、物流の省人化と公共交通機関にアクセスできない地域の移動課題の解決を目指す。医療・健康分野、農業自動化では、2030年までの売上貢献を目標に事業化を進める。こうした取り組みで2024年に売上高300億円を目指す。
「成長事業」ではロボティクス事業である、デジタル社会の基盤を支える成長する市場で、事業規模と領域を一層拡大するため、商品力や生産能力、営業体制を強化、加速させる。前中期で当社グループに加わったヤマハロボティクスホールディングス株式会社とのシナジー効果を高め、収益力を向上。
成長戦略としてSPV(スマートパワービークル)では、新型コロナ感染症のまん延により、人々の行動様式が「より近場へ」「密を避けて」に大きくシフトし、小型パーソナルモビリティに対する需要や、環境意識の高まりで電動モビリティに関心が集まっていることを背景に、同社製品のe-Kitのカスタマイズと完成車ニューモデルの投入で、市場成長以上の規模拡大により売上高の倍増を目指す。
「コア事業の領域」の二輪車事業では、需要回復する新興国市場でプレミアム戦略を推進し収益性の向上をねらう。アセアン、インドでは今後10年で急速に拡大する上位中間層をターゲットと位置づけ、プレミアムセグメントへの魅力的な商品の提供と、デジタルとリアルを融合した顧客との強い絆づくりを進める。マリン事業は、提供価値拡大と高収益体質の維持・強化を図る。大型船外機のラインナップ拡充と販売比率の拡大、生産能力の増強により事業競争力を高める。また、米国のR&D機能拡充によりコネクティッド技術を活用したシステム開発を加速させ、安全・快適なマリンライフを提供する「マリン版CASE」戦略を推進していく。
一方で、経済的価値を高める「財務戦略」では、2024年度の売上高2.2兆円以上、年平均売上高成長率7%以上の、3年の平均営業利益率9%以上を目指す。効率性については、資本コスト以上のリターンを継続的に創出し、ROE(自己資本利益率)15%、ROIC(投下資本利益率)9%、ROA(総資産利益率)10%を目指す。
他方、社会的価値を高める「非財務戦略」では、持続的な社会への貢献を揚げ、自社のCO₂排出量の削減に向け省エネ・再エネ設備を10ヵ国以上で導入し、2022年にCO₂フリー電力を国内事業所から採用。また、製品使用などに関わるCO₂排出量では、プラットフォーム戦略によるEV化の加速に加え、多様なパワートレイン(動力源)に対応した開発を推進。新たに設立する環境ファンドを通じた技術・ビジネスモデルの探索活動を加速させる。
こうした様々な事業、取り組みで、「人とつながる、伸びやかな企業の実現」のため、安心・安全な移動の実現に向け、安全運転支援装備の拡充、技量向上のサポート活動に取り組む。さらに、生涯を通じたヤマハファンを創造するため、DX戦略を推進し世界中のユーザーとのつながりを広げる。人財戦略では社員エンゲージメントを重要な指標として取り入れ、ダイバーシティ&インクルージョンと人財育成を進める。