バッテリーの交換式電動バイク利便性について、2020年9月から始まった産官学連携の実証実験「eやんOSAKA」の結果が自動車工業会より公表されている。実験ではバッテリー交換式の電動バイクの有用性が示されたなどとしている。
実証実験は、国内二輪メーカー4社とENEOSホールディングスの出資による共通仕様バッテリーを利用し、バッテリーシェアリングサービスとインフラ整備を手がける会社「ガチャコ」と、大阪府や大阪大学、日本自動車工業会、民間企業などが交換式バッテリーの利便性検証、電動バイク普及と認知度向上、持続可能な都市交通戦略を目的としたもの。
実証実験では、3カ月を一期とし、第1期から第6期まで計18カ月間行われた。実験に参加したのは大阪大学の学生や教職員ら130人の利用者が、大阪北部の地域でバッテリー交換式電動バイクを大学構内や街中のローソン店内に設置した交換バッテリーステーションでのバッテリー交換体験を、日常生活のなかに取り入れた実験を行ったもの。
これによると、自工会(日本自動車工業会)の2021年「二輪市場動向調査」で、50cc以下の原付一種の利用は、月間平均走行距離154kmで、使用頻度は4~5回利用するとするユーザーが多く占めたのに対し、eやんOSAKAの実証実験結果では季節変動があるものの、平均走行距離は毎月100~300kmでガソリンバイクと変らぬ平均使用距離であったとしている。
実証実験への参加をきっかけに初めてバイクへ乗った利用者は54.6%で半数を超えていた。ただ、バイクでの走行の慣れや、バッテリー交換方法、バッテリーステーションの場所の把握などの障壁を乗り越え、経験を重ねることで走行距離が増加する傾向にあったとしており、バッテリー交換式電動バイクの「有用性」を確認したとしている。
特に利用者へのアンケートでは、79.5%の利用者が、バッテリー交換サービスに「満足」との回答で、バッテリーシェアリングの利便性について高く評価されたことを挙げる。さらに、バイクの魅力である「走ることの楽しさ」を認識した利用者も多く、静音性や快適性などの電動バイク特有の評価、また、コロナ禍における新しい移動手段の可能性としても前向きな意見が多くみられたとしている。
この実証実験の結果を受けてガチャコは2022年秋よりバッテリーシェアリング事業を開始するとしている。ガチャコでは、「充電時間の⻑さ」「電池コストの高さ」「電池の劣化後の処理」など、電動モビリティ普及の課題を解決するため、本実証実験で得た知見に加え、ガチャコ出資会社5社のアセットとノウハウを最大限活用する。
また、ガチャコは経済産業省の電動二輪交換バッテリー整備・運用モデル構築実証事業に採択されたことで、今年度秋から2023年2月末までに、東京や大阪でステーション運用最適モデル実証事業、ステーション整備運用事業を開始する模様。
複数事業者が共通で利用可能なインフラとして「交換式バッテリーステーション」の最適な運用ビジネスモデルの検討のため、ステーションでのデータの収集や分析、共通インフラ最適モデルの調査を行う。さらに最適なバッテリーインフラについても研究を進める考え。
◆「eやんOSAKA」の概要
「eやんOSAKA」は2020年9月よりはじめた、交換式バッテリーの利便性検証、電動バイク普及と認知度向上、持続可能な都市交通戦略を目的とした産官学連携のプロジェクト。利用者20人で3か月間を1期とし、第4期が終了した2021年9月までに延べ80名の学生モニターが利用。当初、実施期間を約1年間であったが、一部の課題対応として期間を半年間延長。第5期は10月から始め、共通のバッテリーで利用可能な原付二種に相当するPCX ELECTRICも追加。原付二種相当の電動車の追加で、より広範囲な移動サンプルデータが収集できたもの。