伊ドゥカティは12月5日、新型「ムルティストラーダV2」2車種を発表した。V型2気筒エンジンを搭載した新開発のミッドサイズ・クロスオーバー・モデル。大幅な軽量化、ハンドリングの向上、さらに乗りやすくかつ走る楽しさを追求したとしている。発売は2025年1月の予定している。税込価格はムルティストラーダV2が199万4000円、同V2 Sは230万7000円。
モノコック・フレームと新開発のV2エンジンを中心に、先代モデルより18kgの軽量化した。同機種の装備重量199kgで、同カテゴリーで最も軽量で、停止状態や低速時の取り回しが楽に行えるという。軽量化に加え、可変バルブタイミング・システムを採用により幅広い回転域での力強いパワー、ベンチマークとなるエレクトロニクス・パッケージ、エルゴノミクスとエアロダイナミクスに焦点を当てた結果、ライディングの楽しさ、燃費、パフォーマンス、ハンドリングを新たなレベルへと引き上げたという。
デザインは、水平基調のバランスのとれたボディ、軽快で短いテール、サイドパネルによって強調されたスポーティなラインを特徴とするフロントエリアなど、ムルティストラーダ・ファミリーの歴史を築いてきたスタイル・エレメントからインスピレーションを得たという。ムルティストラーダの特徴的なデザインであるショルダー、フロントマス、そして「ビーク」は、より調和のとれたものになったという。
同機種は、すべてのドゥカティ・モデル同様、デザインと機能性を兼ね備えておりドゥカティ・スタイルセンターの「チェントロスティーレ・ドゥカティ」は、研究開発部門のエンジニアと緊密に協力してラインを定義し、熱的快適性と環境保護性能を向上させるためのデザインに、エアロダイナミクス・ソリューションを統合したという。
防風効果が高く、高さ調節が可能なフロント・スクリーンの形状は、フロントラインに完璧に統合されたデフレクターも含め、エアロダイナミクスに関する緻密な研究を通じた結果として定義したという。熱的快適性を向上させるため、ムルティストラーダV4と同様に、バイクのデザインに統合されたアップウォッシュと呼ばれるラテラル・エア・コンベヤーはライダーの脚に外気を取り入れるという。
最新世代のパニガーレとムルティストラーダV4からインスピレーションを得た新しいヘッドライトとデイタイム・ランニングライト(DRL)は、すぐに認識できるコンパクトでアグレッシブなフロントビューを演出した。先代モデルよりも短い「ビーク」は、フロント・スクリーンに巧みに統合され、より調和のとれたイメージを生み出す。サイドパネルのデザインと調和したサイド・インジケーターは、優れた視認性を提供し、インジケーターとフェアリングの間に隙間を作ることによって、ライダーに向かって外気が通過するように新設計となる。
エルゴノミクス(人間工学)は、快適性に重点を置き完全に見直した。新設計のライダーとパッセンジャー・シートに加えて、リアのトップケースとサイドケースの取り付け方法を工夫することで先代モデルよりも足元および胴体スペースを増加した。高さ850mmと830mmの2つのポジションに調整可能なライダーシートを装備。ドゥカティ・パフォーマンス・カタログには、アクセサリーとしてハイシート(870mm)およびローシート(810mm)も用意した。Sバージョンでは、ドゥカティ・スカイフック・セミアクティブ・サスペンション(DSS)およびミニマム・プリロード機能により、シートを790mmまで下げることが可能となる。
新型V2エンジンは、コイルスプリング式バルブ駆動システムを採用し、可変インテーク・バルブ駆動システム(IVT)を備えた。最高出力115ps@10,750rpm、最大トルク92Nm@8,250rpmを発生する890cc、90°V型2気筒の新型V2エンジンを搭載。非常にコンパクトかつ軽量で重量は54.9kgとなる。可変バルブ・タイミングにより、同エンジンはパフォーマンス、パワー、燃費を最適化した。高回転域では力強いパワーを発生し、低中回転域では豊かなトルクを提供する。3,500rpm以上で最大トルクの70%以上を発生し、3,500から11,000rpmの間では常に75%以上を発生。低回転域でのより安定した燃焼が加わり、小さなスロットル開度でも非常に精度の高い作動が可能で、さらにフライホイールを大きくしたことで、スロットル開度に対するレスポンスがスムーズになり、特にツーリングや市街地走行での走る楽しさを向上させた。
ギア比は同機種専用に設計しており、1速と2速をより低く設定することで、低速走行時のコントロール性とフルスロットル時の加速性能が向上するという。ギアボックスには、より正確なシフト・フィールとより速いギアチェンジを可能にする新しいドゥカティ・クイック・シフト2.0を搭載する。
新設計のシャシーは、ライディング・シーンにおける快適性と走る楽しさを向上させるため、ムルティストラーダV4と同じ構造を採用しながらも、同機種の新設計フレーム、リア・サブフレーム、スイングアームを装備した。フレームはエンジンを構造部材素として使用するアルミニウム製モノコックとし、リア・サブフレームはスチール製トレリス、スイングアームはアルミニウム鋳造を採用。装備重量はわずか199kg。V2 Sバージョンはセミアクティブ・サスペンションを装備し202kgとなる。
新設計のモノコック・フレームにより、足つき性に優れたスリムとした。膝と内腿とバイク表面の接触面積を改善し、ライディングの楽しさと高速走行時のコントロール性が向上。ハンドル操作に必要な労力が軽減され、コーナーへの進入時やコーナリング中に、よりニュートラルな挙動が実現したという。
足回りは45mm径のマルゾッキ製フロント・フォークと、プログレッシブ・リンクを備えたザックス製リア・ショックアブソーバーを装備。共にフルアジャスタブル・タイプ。ムルティストラーダV2 Sは、電子制御式ドゥカティ・スカイフック・セミアクテ ィブ・サスペンションを搭載し、ブレーキング時のダイブ(アンチダイブ)と加速時の「沈み込み」(アンチスクワット)を抑制することで、快適性や安全性、パフォーマンス、ライディング精度をさらに向上させた。
さらに、ミニマム・プリロード機能により、ボタンを押すだけでリヤ・サスペンションを最小値まで下げることができ、荷物の満載時やパッセンジャーが同乗している場合に、足つき性が向上するという。新型ムルティストラーダV4と同様に、サスペンションモードはライディングモードとは独立して設定することが可能で、電子制御システムの設定およびエンジン特性を変更せずに、好みのサスペンション設定を選択することが可能だという。
同機種のスタンダードとSの両バージョンには、19インチのフロント・ホイールと17インチのリヤ・ホイール(サスペンション・ストロークは前後ともに170mm)、ピレリ製スコーピオン・トレール2タイヤを装備し、優れた多用途性と乗り心地を提供するとしている。ブレンボ製ブレー キシステムは、320mm径フロント・ダブルディスクと265mm径リヤ・シングルディスクを備え、優れた制動力を発揮するという。
電子制御システムでは、フル・パッケージで搭載し、新設計のハンドルバー・コントロールと新しい5インチTFTカラー・メーターパネルで操作することが可能。同メーターパネルは、3つのインフォモードに切り替えることが可能で、全面的に改良された多言語インターフェイスを備える。
設定されている5つのライディングモードと4つのパワーモードにより、エンジン出力とレスポンスを変更でき、あらゆる状況に適応させることができるという。ライディングモードでは、コーナリングABS、ドゥカティ・トラクション・コントロール(DTC)、ドゥカティ・ウィリー・コントロール(DWC)、エンジン・ブレーキ・コントロール(EBC)が事前に定義されたレベルに設定されるが、ライダーが変更することも可能。
3つのインフォモード(ロード、ロード・プロ、ラリー)を使用すると、メーターパネルの機能を最大限に活用し、表示される情報を変更してあらゆる状況で最高のライディング体験を得ることができ、例えばロード・プロは、現在のパワーおよびトルクの割合をリアルタイムで表示するという。
クルーズコントロール、メーターパネルに統合されたUSBソケット、ドゥカティ・ブレーキ・ライトEVO(急ブレーキ時に後続車に警告する機能)を標準装備し、V2 Sには、オプションのターン・バイ・ターン・ナビゲーションの利用を可能にするドゥカティ・マルチメディア・システムも標準装備している。さらに、新しいカミングホーム機能は、イグニッションをオフにしても一定の期間、ロービームを点灯することにより、夜間の帰宅時に周囲を明るく照らすことができるという。
ドゥカティは近年、保障分野も強化。すべてのムルティストラーダ・ファミリーと同様、新しいV2もメンテナンス間隔(30,000km毎のバルブクリアランス点検)と「4EVER Ducati」およびロードサイド・アシスタンス・プログラムにより、最大限の安心感を持って走行できるとしている。「4EVER Ducati」は、4年間有効で走行距離無制限の保証を提供する。ロードサイド・アシスタンス・プログラムでは、保証期間中にトラブルが発生した場合に備えて、ロードサイド・アシスタンス、ライダーとパッセンジャーの移動手段、代替車両、4つ星ホテルでの宿泊が追加されるという。世界90か国以上の800を超えるドゥカティ正規ディーラーネットワークによってサポートされるため、安心して旅を続けることが可能だとしている。
豊富なアクセサリーは、多様なニーズに合わせてカスタマイズすることができる。容量60リットルのプラスチック製トップケース、容量76リットルのアルミニウム製トップケースを用意する。フローティング・アタッチメントを採用したこれらのケースにより、走行安定性と安全性が向上するという。スチール製プロテクション・バーは、転倒時の損傷を最小限に抑え、センタースタンドはバイクのメンテナンスと積載作業を容易にするとしている。
スポークホイールの装着も可能で、同機種の多用途性が向上し、突然アスファルトの路面が途切れても快適な旅を続けることができるとしている。エグゾーストを交換してムルティストラーダV2を強化したいライダーには 、テルミニョーニ製のさまざまなシステムを用意する。
同機種は標準バージョンのV2とDSSセミアクティブ・サスペンションなどを備えたV2 Sを用意。税込価格は、ムルティストラーダV2が199万4000円、同V2 Sは税込価格230万7000円。
V2はドゥカティ・レッド・カラーで提供され、V2 Sはストーム・グリーンとドゥカティ・レッドから選択することが可能である。さらに、プラスチック製サイドケース、センタースタンド、グリップヒーターを備えたトラベル・パッケージも用意され、ヨーロッパでは、A2ライセンスを所有するライダー向けに出力を35kWに抑えたバージョンも用意する。
【ムルティストラーダV2 S】
◆カラー
・ドゥカティ・レッド
・ストーム・グリーン
◆主な標準装備
・ドゥカティV2エンジン、890cc
・最高出力 115ps@10750rpm
・最大トルク 92 Nm@8250rpm
・装備重量(燃料を除く):202 kg
・アルミニウム製モノコック・フレーム
・19リットル・タンク
・サスペンションモードとミニマム・プリロード機能を備えたドゥカティ・スカイフック・サスペンション
・電子制御式マルゾッキ製フロント・フォーク、45mm径、サスペンション・ストローク170mm
・電子制御式ザックス製リア・ショックアブソーバー、サスペンション・ストローク 170mm
・アルミニウム製ホイール、フロント19インチ、リア17インチ
・ブレンボ製ブレーキシステム、320mm径フロント・ダブルディスク、265mm径リア・ディスク
・ピレリ製スコーピオン・トレール2タイヤ
・6軸慣性測定ユニット(6D IMU)を備えた最新世代のエレクトロニクス・パッケージ:コーナリングABS、ドゥカティ・トラクション・コントロール(DTC)、ドゥカティ・ウィリー・コントロール(DWC)、ドゥカティ・クイック・シフト(DQS)2.0、エンジン・ブレーキ・コントロール(EBC)
・インフォモードと新設計されたハンドルバー・コントロールを備えた新しい5インチフルTFTメーターパネル
・ライディングモード(スポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロ、ウェット)
パワーモード(ハイ、ミディアム、ロー、オフロード)
・DRLとカミングホーム機能を備えたフルLEDヘッドライト
・ドゥカティ・ブレーキ・ライトEVO
・ドゥカティ・マルチメディア・システム
・クルーズコントロール
・メーターパネルのUSBソケット
【ムルティストラーダV2】
◆カラー
・ドゥカティ・レッド
◆ムルティストラーダV2 S専用装備を除く標準仕様の違い
・装備重量(燃料を除く):199 kg
・手動調整式マルゾッキ製 45mm径フロント・フォーク、サスペンション・ストローク 170mm
・手動調整式ザックス製リア・ショックアブソーバー、サスペンション・ストローク 170mm