
四輪・二輪・花きなどの業者間オークションを主力に循環型マーケットデザインを展開する株式会社オークネット(東京都港区)は6月27日、創立40周年を迎え東京の明治記念館で「創業40周年記念イベント」を開いた。イベントでは特別ゲストとして元日本サッカー協会会長などを務めた川淵三郎氏、東京大学マーケットデザインセンターの小島武仁・センター長を迎えて講演のほか、来賓や関係各社の代表者らを招き記念パーティを行った。
イベントではコンセプトとして「COCRE」(Co-Create the Future of Circulation)共創を意味し、循環する未来を創造する思いを込めた。基調講演として同社の藤崎慎一郎・社長は、同社の創業からこれまでの沿革、将来に向けた指針などを語り、一層の発展を目指し世界中のあらゆるモノ・コトに新たな価値を見出し循環型社会での貢献への考えなどを述べた。
講演で藤崎社長は創業について「父の眞孝が、不要な車を3行広告に載せたところ、問い合わせが殺到したことで、これをビジネスチャンスと捉え中古車業界に足を踏み入れたことが、今のオークネットの切っ掛けとなった」と紹介し、40年間の歩みを大型スクリーンに当時の映像を映し出したながら振り返った。
1985年に中古車TVオークションを開始。当時はオンラインということばに馴染みがない時代であったことからTVということを強調したという。1989年には民間衛星放送が可能となりTVオークションを衛星通信によるオークションに移行させた。90年代の半ばではパソコンが誰でも持てるような時代になり、その一方では競合参入の懸念があったがその必要はなく終わった。10年におよぶオンラインビジネスで積み上げた経験が優位に働き先行者である同社がさらに強調される結果になったなどと説明。

藤崎・社長
そうした堅調に伸びる中で、創業者の眞孝社長が51歳で他界。93年に眞孝社長の弟である現会長の清孝氏が社長に就任。その後バイクオークションと花きオークションにも参入しビジネスを拡大。2000年には東証一部に上場。また、四輪では共有在庫サービスを開始。創業より約15年が経過した2021年には全国各地の現車会場とのライブ中継オークションを開始しているなどとした。
2000年代半ばには中古PCの業者間オークションを開始したほか、ブランド品のブランドオークションも開始しサービスを拡大。一方でブロードバンドや通信コスト縮小するなど、衛星通信でのオークションからインターネットへ切り替えるなど大きな転換点、次の成長に向けて多角化やインフラの改革を進めたに大胆な投資などを行った。その一環でMBOによる事業拡大。
2012年には中古のスマートフォンオークションもスタート。現在は飛躍的に拡大しているなどした。リユースが世界市場に広がり海外にも展開しているとした。多角的な事業により信頼を高め2017年には株式市場に再上場した。サスティナブルの消費者意識の変化やコロナ禍でのオンラインでの取り引きが高まり、現在は取扱高約6400億円規模まで成長したと強調。
藤崎社長は、「振り返ると、皆様とともに成長してきた。そこで今回40周年イベントコンセプトを“COCRE”とした。これは循環をするような未来を、皆様とともに作っていきたいと考えています」と述べた。また、「オークションを通じて、価値あるものを循環させてきました。昨今、リデュース、リユース、リサイクルといったリサイクルサーキュラーエコノミーということばがあるが、当社は創業以来、サーキュラーエコノミーを体現してきた企業であったのではないか。リサイクルは再生段階でのエネルギーが必要で環境への負担もあり、リサイクルに進む前の段階で、我々ができることがあるのではないかと考えている」と新たな取り組みへの考えを挙げた。
一度使い終わった製品については、別の目的に変えてもう一度再利用するリパーパスにより、流通、経済活動への取り組みを挙げサーキュラーエコノミーへ取り組む考えを述べた。

循環型マーケットデザインの展開など説明する藤崎・社長
モノが長く使われる世界においては、例えばデジタルプロダクツでは世界中の企業に時差がなく公平に参加できる取引の仕組みの実現を目指しているとした。学術機関の方々と協業し、これまでにない新しいオークションを実現化したいとの考えを表明。
すでに中古EV車では、自動車のバッテリーだけを取り出して、蓄電池として別のモノに利用するといったリパーパスの世界、新たなプラットフォームの世界を開始していることを挙げた。
最後に、自社のミッションステートメントについて取り上げ「私たちは、マーケットデザインで価値をつなげるという、ミッションステートメントを掲げています。マッチングを通じて価値あるモノを世界中の必要とする人のもとにつなげていく循環型プラットフォームを様々な分野で展開してきました。40年間のオークション事業でのノウハウを活用し検査や物流など、周辺事業でも様々な新しい企業様とつながってきました。当社は、今後も新しいマーケットデザインにチャレンジすることで、多くの方々、社会より求められる企業として展開していく」などと述べた。
ゲストの東京大学マーケットデザインセンターの小島・センター長の講演では、人と人、モノサービスを適材適所、引き合わせる方法を考えるマッチング理論と、これを応用して社会制度の設計や実装につなげるマーケットデザインについて講演した。また、元日本サッカー協会会長などを務めた川淵氏は、同協会会長就任についての経緯や当時の考え心境など、メディアではあまり報じられてこなかったこと取り上げ、会場の笑いを取りながら紹介した。

東京大学マーケットデザインセンターの小島・センター長

元日本サッカー協会会長などを務めた川淵氏

あいさつに立った藤崎・会長