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【販売に「マジック」無し!】③ 「企業の競争力」 壊れるのがハーレー、細部から徹底 アンクル・アウル コンサルティング 奥井俊史・代表

【販売に「マジック」無し!】③ 「企業の競争力」 壊れるのがハーレー、細部から徹底 アンクル・アウル コンサルティング 奥井俊史・代表

2022.01.01

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【販売に「マジック」無し!】③ 「企業の競争力」 壊れるのがハーレー、細部から徹底 アンクル・アウル コンサルティング 奥井俊史・代表

競争力とは、「企業が開発・生産・販売する製品・サービスが、まだそれを買っていない潜在顧客を引きつけ、かつ、すでにそれを買った既存顧客を満足させる力」のこと。すなわち、潜在顧客の誘引力と既存顧客の説得力という、この二つの力が伴う時、顧客層拡大と評判向上の好循環が生じる。
――― 藤本隆宏『日本もの造り哲学』(日本経済新聞社 2004年)

HDJの場合、弱小企業ながら本社が開発・生産した製品を、オートバイの世界市場を圧倒的に占有していた日本の世界4大メーカーの母国市場で販売し、サービスを提供し、ユーザーへのハーレーがあるライフスタイルを提供した。それに関連する各種プログラムを、競合各社をはるかに上回るレベルで実践することによって顧客を継続的に誘引し、既存顧客をも説得維持して新車・中古車のハーレー市場を拡大し、当該市場で圧倒的な評判の向上をもたらした結果、市場シェア40%以上を実現・維持したのである。

ハーレーの社長就任の頃は、ハーレーの品質に関するクレームが多く、ツーリングとなるとHDJからサービス員が運転するトラックに修理工具の一式を積んで伴走させていた。しかし、肝心のトラブル内容の突っ込んだ検討もなく、解決には全くつながっていなかった。実際にサービス入庫する車もあったのだが、その内容は極めて簡単なもので製品の品質由来というよりは、扱い方の不適切さやメンテナンスの不良に関するものが多かった。

販売店が少なく、それに加えてメーカーとしてのメンテナンス知識の普及の取り組みもお粗末で、販売店にろくなサービストレーニングも与えていなかった。

当時は、このような事態に前輸入元であった代理店および初期HDJとも無関心を決め込んでいた。このように基本的なメーカーの責務を果たしていなかったことが、市場では製品の品質の悪さとして誤認されていた。本社の研究結果では、既に当時のハーレー製品の品質は日本各社を凌駕するものであったと考えていたらしいのだが、日本では「壊れるのがハーレー」「部品がないのがハーレー」と揶揄されていたこの点は、新HDJの積極的な取り組みで短時間に著しく改善した。

着任後、一番の内部的な取り組みは、部品倉庫の抜本的な拡充と新しい部品管理プログラムの開発、潤沢な本社からの部品の輸入であった。当時は月に何度となく倉庫通いをしたことか。

 

奥井俊史氏

 

■奥井俊史氏のプロフィール
大学卒業後にトヨタ自動車に入社。主に途上国の輸出に携わり、1990年ハーレーダビッドソンジャパン代表取締役に就任。就任当初、全盛期の6分の1までに縮小していた国内オートバイ市場で「イベントマーケティング」や「独自のCRMシステムの構築・活用」など、数々の施策を考案。ハーレーは「パーツが無い」「壊れる」といった従来のイメージを大きく変え、モノではなく価値を売る営業改革を実行。2000年には751CC以上、2003年では401CC以上のオートバイ販売台数でトップシェアを記録。巨人企業を退け日本国内でハーレーの不動の地位を築いた。オートバイの規制撤廃実現にも貢献し就任中は19年間連続成長を達成。

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