輸入車メーカーと国産メーカーの各社が自社ブランドの演出、世界観などを打ち出すCI(コーポレート・アイデンティティ)を導入する専売店化が進んだ。昨今ではそうしたメーカーの専売店でもメーカーの店舗基準に加え、運営する販売店独自の要素、機能などを取り入れる専売店も出現する。今年7月に開店した「ドゥカティつくば」(有限会社ライダースクラブ/吉田祐介・社長)は、ブランドCIの店舗基準に新たな形の商談スペースを設けた。(記事:鈴木香)
オートバイ店の間取りは歴史的にみて、80年代にみるように大方の販売店は機能としては車両展示スペースと整備スペースに分けられた。特に展示スペースには横長のカウンターが設置され、カウンター越しに来店客と販売店スタッフの対面での商談といった形態であった。
しかし、統一したブランドCIを導入した輸入車、とりわけ80年代にBMWジャパンが日本での先駆けといえ、国産各社も当時のレベルで統一感を演出した店舗づくりが展開された。さらに90年代後半にはハーレーダビッドソンジャパン(HDJ)がデザインストアと題し、ライフスタイルを訴求し統一感を演出した店舗展開に取り組んだ。
HDJは店舗にそれまでの展示スペースに商談カウンターといった形式から新たな機能を取り入れた。特に商談のための専用テーブルや、商談専用のスペース、来店者がくつろげるスペースを設け同時に窓越しには整備作業の様子を見守ることができる様にしたほか、きれいなトイレの展開など、それまでにない間取りと機能を取り入れた。
近年ではカワサキモーターサイクルジャパンが専売店ネットワークの「カワサキ・プラザ」の展開をはじめ、「おもてなし」をキーワードに店舗でカワサキの世界観を演出。特に独自ブレンドのコーヒーや店内の香りまで統一しこだわったことは、それまでのバイク店の在り方を変えた。
今年7月15日、ドゥカティの専売店のドゥカティつくばが開店した。同店はドゥカティジャパンが展開する専売ストアでの店舗デザインのCIを導入。CIの導入に加え同店舗では独自の機能性を高めた一風変わった商談スペースが設けられている。
商談には車両購入ユーザーのプライバシーにかかわる内容も含まれるため商談室として独立させている店舗も近年増えた。しかし同店では特に商談室には実際にユーザーが購入しようと考える車両を室内に運び入れることができるのが特徴となる。車両を説明しながら商談が進められ、商談時に車両をユーザーの身近な室内に運び入れられることで、ユーザーの購入意識を高い状態を保ったまま商談を進めることができ、車両説明も商談中にわざわざ移動せずに容易になっている。
さらに、商談室には車両をショールームから移動できるほか、商談のほかにも納車時も利用でき、車両を身近において操作説明などを行えるようにもした。納車のための操作説明などの後には、そのまま屋外に車両を運びだすことができる様にもした。商談室はショールームから車両を運び入れることに加え、納車時には車両を屋外に移動できるドアが設置されている。
かつて「神は細部に宿る」とハーレーダビッドソンジャパン元社長の奥井敏史氏はよく言っていた。同店の様に商談室であってもさらに工夫することで、ユーザーの購入意識をさらに一段高められ、販売につながりやすくできるものだ。