オークネット(東京都港区/:藤崎清孝CEO、藤崎慎一郎COO)の子会社であるオークネット・モーターサイクル(オークネットMC=福田博介社長)は、国内のバイク業界でも早い段階で、個人向け短期バイクリース事業「ME:RIDE」(ミーライド)を始めた。現在、バイク業界で利用料金がサブスクリプション(サブスク)サービスとしての展開では唯一といえそうだ。同社の現場スタッフにME:RIDEの現況や手ごたえ、今後の取り組みなどについて生の声を聞いた。(鈴木香)
ME:RIDEは月々の定額を支払うことで中古バイクを保有するように利用できるサービスとして、2020年に開始。同社は今年、新たにME:RIDE事業部を設置し、本格的に全国展開へ向け取り組み始めた。同事業の最先端で働く、高野葵氏(写真左)と頭川拓生氏(写真中央)、石澤輝氏(写真右)の3人の現場スタッフが本サイトの取材に応じた。
――ME:RIDEスタートにあたっての市場の背景は。
高野氏:「新型コロナが広がり、免許取得者数が増え、バイク需要が拡大したことがスタートの背景として挙げられます。需要が拡大したことでメーカーの新車の納入が遅延し、さらに近年、排ガス規制で生産終了となった人気の中古バイクの需要も高まり、市場価格も高騰しました。弊社のネットワークを駆使し、人気の大型ネイキッドタイプやスーパースポーツモデルなどを、月々の定額で提供できるのではないかと考えました」
「特に近年、モノを持たない時代になりました。バイクを購入するためには、頭金・保険・整備費用なその初期費用、さらにはローンやメンテナンス費用の負担が少なくありません。ME:RIDEでは一切のそれらの負担はなく、メンテナンス費用も月額費用に含まれています。バイクに乗るユーザーのハードルを低くして、サブスク形態という気軽な感覚で、かつ『買う』と『借りる』の中間を提供することで、バイクユーザーが増えればと考えたわけです」
「レンタルとの違いについては、レンタルでは毎月の点検のために、貸出店に出向く必要があります。一方、リース契約上では使用者がお客様になり、車検証もお客様自身の名義になります。自分のバイクのように、返却時間などに縛られることなく楽しむことができます。その点が、ME:RIDEとレンタルサービスとで異なる点です」
――メーカーの一部はレンタルを展開しているが、サブスクは行っていない。オークネットではME:RIDEを実現したが、メーカーが展開しようとする場合と何が異なるのか。
石澤氏:「サブスクでのサービス提供の実現には、当社では業者間オークションが根幹にあることが挙げられます。特にオークションは現車を持ち込む会場ではないことで、全国に陸送ネットワークを持ち、都市部に限らず全国に会員の販売店様との取引が基礎としてあります。こうしたネットワークがあるため、オークションに出品される多種多彩な車種を仕入れてエンドユーザー様に貸し出すこともオークションの延長にあり可能です。当然全国のお客様にバイクを届けられ、販売店様と協力しながら全国ネットワークの基盤があったことも、ME:RIDE開始の要因でもあります」
「一方で、計画を始めた当時はコロナまん延の前で、現在ほどオークションで出品車の引き合いが活発な状況ではなかったともいえます。オークションで中古バイクを仲介する上で、もっと中古バイクを有効に利用できないかと考えていたことがスタートの要因に挙げられます」
――中古では価格設定が難しいのでは。
石澤氏:「オークションでは車両価格がシビアなため常に相場情報を把握しています。車両情報を踏まえた上で、お客様が納得できる価格で提供できる車種を選択し、価格設定をしています。中古車のため新車に比べて車両状態によって価格設定に幅もあるため実現できたともいえます」
――利用者のユーザー像や利用目的などは。
石澤氏:「平均年齢では30代半ばですが、実際は20代半ばと、40代半ばのお客様で2分化しています。利用目的も異なり、20代半ばのお客様はバイクを持ち始める前の、自分に適したバイク探しといった傾向が多くなっています。利用車種は250㏄クラスの人気が高く、半年位で車両を替えるお客様が多くなっています」
「40代半ばのお客様は、子育て世代とあってバイクを離れていたリターンライダーのお客様が多い傾向があります。こうしたお客様は、特に輸入車の利用が多くなっています。新しく車両をウェブサイトに掲載すると、数十分でクリックしてお申込みされるお客様も多いです。輸入車の場合はしっかりメンテナンスする必要性が少なくないため、ME:RIDEを利用されるお客様が増えているといえます」
――利用メリット、ユーザーが増える一方で、取り次ぐ協力店(販売店)のメリットは。
石澤氏:「協力店様はME:RIDEを介して、新規のお客様との長期的な接点、機会を得ることができます。先にも挙げました20代の若いお客様の多くが、バイクに乗るためには、どこの店に行けばいいのかきっかけや動機付けできない場合が多く、こうしたお客様にとってはME:RIDEの利用が店選びのきっかけにもなっています。私どもではME:RIDEを通じて、バイクユーザーの創出に貢献できると考えています」
――協力店として参加する販売店は。また、現在の利用台数は。
頭川氏:「ME:RIDE協力店として加盟される販売店様の多くが、整備力が比較的に高く、国産4メーカーを全般的に扱っているところとなっています。また、協力店様は、お客様に対してフレンドリーにご対応くださり、お客様より良い対応をしてもらったという多くの声が直接届いています。協力店様とお客様、そして私どもでお互いに信頼感を持って、より良い対応ができているよう日々尽力しています」
「協力店様の多くは中堅規模の販売店様であり、なかには大手や小規模での販売店様にも加盟して頂いています。協力店様にお願いしている作業としては、ある程度の整備作業がありますが、ほとんどが車両点検程度の作業のため、販売店様の手間や負担が少ないことも特徴です。販売店様にとって月額の加盟料などの必要もないため、協力店様にとってもメリットが大きいサービスであると考えています」
「利用台数については、サービス開始よりまだ日が浅いのですが、これまでにお客様にご利用いただいた台数は約550台で、今後も増加を期待しているところです。現段階で協力店様は主に首都圏などの都市部が中心になっていますが、協力店の近隣のお客様の利用が多くなっていることもあり、ネットワークを拡大することで、全国各地で利用者を掘り起こすことができ、同時にバイク業界の発展も貢献できると考えています」
――今後の利用者拡大についての取り組みは。
高野氏:「現在マス媒体のほかに、ツイッターやインスタグラム、ラインといったSNSでもフォロワーが拡大しています。SNSでは頻繁に利用者の許可を得て、写真や出発時の動画、インタビューなどの生の声を掲載しています。情報の掲載方法も、ある一定のフォロワーが集まるまでは認知を中心とした情報掲載し、その後は実際のライダーらへ向けた情報を掲載するなど、情報内容の出し方も変えて進めていきます」
「新しいサービスなので、バイクにサブスク・サービスが存在するという認知がまだされていません。まずは認知してもらうために、今後も様々な媒体で告知していきたいと考えています」
石澤氏:「ME:RIDEはバイク業界で新しいサービスとあって注目されているのか、大手新聞社やビジネス誌、テレビ番組などからも、問い合わせを多く頂き、掲載や放送後の反響も予想以上に大きく、申し込みが増えています。テレビCM放送の準備も進めているところです」