カワサキモータースは「伝統と革新」をテーマとした。伝統では1878年に船舶からはじまり、鉄道車両や航空機、そしてモーターサイクルやジェットスキー、オフロード四輪車など、陸海空のモビリティを造ってきた歴史と技術。革新では水素エネルギーがもたらす「革新」へ向けて、川崎重工グループの総合力とカワサキモータースも水素エネルギーを「つかう」技術に挑戦。同社では伝統を継承するモーターサイクルと、水素エネルギーを使う二輪エンジン、モーターサイクルなどを披露した。
ワールドプレミアで「Z900RS SE」「Z900RS CAFÉ」を公開した。共に来年2月発売でZ900RS SEは税込価格183万7000円、Z900RS CAFÉは同154万円となる。2018年の発表より、Zの伝統と現代の技術の融合してきたZ900RSをさらに進化させたモデル。
Z900RS SEは電子制御スロットルバルブを備えたエンジンを搭載させ、低中回転域での操作性と高回転域での出力を制御する。最新機能のカワサキコーナリングマネジメントファンクション(KCMF)や、カワサキクイックシフター(KQS)、クルーズコントロール、さらにスマートフォン接続機能などライダーサポート機能を採用し拡充させた。スタイリングでは、レトロスポーツイメージをさらに強調する新設計のメガホン型サイレンサー、エキゾーストヘッダーパイプを採用した。足回りではオーリンズ製リヤサスペンションやブレンボ製ブレーキシステムに加え、日本仕様では前後ドライブレコーダーを標準装備する。

Z900RS SE

Z900RS CAFÉ
Z900RS CAFÉはフロントカウルにドロップタイプのハンドルバー、専用シートを組み合わせた。燃料タンクにのみのグラフィックはカワサキの伝説的な歴史車「マッハ」シリーズで使用されていたレインボーラインに着想を得ているもの。KAWASAKIヘリテイジロゴ、上質なヘアライン仕上げのサイレンサー、ショートミラーを装備した。
革新の一つ、展示する「H2 Hydrogen」はNinja H2の998cm 3並列4気筒スーパーチャージエンジンをベースに、水素燃料の筒内直接噴射(直噴)仕様に変更したエンジンを、水素燃料タンクや燃料供給系統を備えた車体に搭載した研究用車両。水素を燃焼して走行するため排出するのは、ほぼ水だけだ。

H2 Hydrogen

左は直列6気筒水素エンジン、右は「H2 Hydrogen」に搭載する水素エンジン。
さらに直列6気筒水素エンジンも披露。カワサキモータースが開発し試作を進める水素を燃料とした、6気筒レシプロエンジンのモックアップモデル。軽量で高出力なモーターサイクルエンジンの設計思想を応用し、様々なモビリティへの搭載を想定している。
販売モデルでは「W800」「W230」を展示。W800はワサキが誇る「W」の最大排気量モデル。773cm³空冷バーチカルツインエンジンに360度クランクを採用し、力強い鼓動と迫力のあるエンジンサウンドを実現。味わい深い走りを楽しめる。Wブランドの集大成モデル。W230は味わい深さを追求した232㏄空冷単気筒エンジンと、Wらしい鼓動感溢れるライディングフィール、軽快なハンドリングを実現するなど、Wの伝統的なスタイリングを継承する。

W800

W230

「W」60年の伝統を強調する。
1965年に発表した「650-W1」を展示。誕生から今年60周年を迎えた最初のWブランドモデル。同年の第12回東京モーターショーでデビューした。これは現在に続くWブランドの始まりであり、カワサキの大型モーターサイクルの原点となる。カワサキは、今年2025年から2026年にかけての1年間をWブランド60周年のアニバーサリーイヤーとしてWの魅力を発信していくという。
カワサキ傘下のイタリア「bimota」からは市販車2機種を披露。「KB998 Rimini」は今年11月8日に税込価格693万円発売する。モデル名は、ビモータ工房があるイタリアの都市である「リミニ」をその名に冠したもの。2025シーズンのスーパーバイク世界選手権を戦うKB998 Riminiをベースとした市販モデル。今年2月24日までに125台を製造し、さらに12月31日までに125台を追加し製造知る。FIM(国際モーターサイクリズム連盟)の規定に準拠するため、来年にはさらに合計500台を生産する予定という。
エンジンは水冷4ストローク並列4気筒、DOHC4バルブを搭載。最高出力は147.1 kW/200 hp@1万3600r/min、最大トルクが111Nm/11.3kgf・m@1万1700rpm。カワサキの数々の最新技術搭載。車両重量は207kg。
もう1台は「Tesi H2 TERA」は、bimota初のクロスオーバーモデル。独自の新Tesiセンターハブステアリングシステムを備えたシャーシに、200PSを発揮する998㏄水冷並列4気筒スーパーチャージドエンジンを搭載。bimotaの革新的な車体設計技術が実現する最適な重量配分と、ステアリングとサスペンションが独立した特性を組み合わせることで、どのようなシチュエーションでもスポーティかつ軽快なハンドリングを可能にしています。鍛造アルミ合金と、ドライカーボンファイバーで構成。専用設計のアンラス製デュアルパーパスタイヤ、アクラポビッチ製チタンエキゾースト、オーリンズ製サスペンション、ブレンボ製ブレーキシステム、OZレーシング製アルミ鍛造ホイールなど、細部までこだわったコンポーネントを装備。

11月8日に発売する「KB998 Rimini」

「Tesi H2 TERA」はbimota初のクロスオーバーモデル。
◆ブリーフィング/伊藤浩・社長
「川崎重工グループの『伝統』と、グループの力を結集して取り組んでいる『革新』についてお話しします。
川崎重工グループの始まりは、1878年までさかのぼります。ここ東京ビッグサイトから約5キロの距離の、東京・築地。いまなお文明開化の気風を感じられるこの街に、創業者である川崎正蔵は、造船所を開設しました。船舶から始まりその後、鉄道車両、航空機、そしてモーターサイクルやジェットスキー、オフロード四輪車などを送り出してきました。陸海空のモビリティとともに、人々の暮らしと未来を作ってきたのがカワサキです」
「そしていま川崎重工グループの140年を超える伝統を基に取り組んでいるのが「つくる・はこぶ・ためる・つかう」水素サプライチェーンへの挑戦です。「カーボンニュートラルの実現」と「エネルギーの安定供給」という二つの課題を解決し、水素エネルギーがもたらす『革新』の未来に向かって、川崎重工グループの総合力を結集して取り組んでいます。カワサキモータースも水素エネルギーを『つかう』技術に挑戦しています」
「そのひとつが『水素エンジンモーターサイクル』です。今年7月、自転車ロードレースの最高峰ツール・ド・フランスの最終ステージでは、ゴールとなっているシャンゼリゼ通りでパレードランを行い、カーボンニュートラルを目指した製品づくりを、パリと世界各国のみなさまにご紹介しました。この水素エンジンモーターサイクルのデモンストレーション走行を、10月31日、11月1日、2日の3日間で行います。また、研究中ですが6気筒水素エンジンのモックアップモデルも展示しています。未来の鼓動、革新の息吹を、ぜひ感じてください」

伊藤浩・社長
「カワサキモータースの「伝統」について、もう少しご紹介いたします。1965年、第12回東京モーターショーでデビューしたのが「650-W1」、通称ダブワンです。『Wが無ければ、ZもNinjaも生まれなかった』。このダブワンから、カワサキの大型モーターサイクルの歩みが始まりました。当社は今年、2025年から2026年にかけての1年間をWブランド60周年のアニバーサリーイヤーとし、その魅力を発信してまいります」
「ダブワンから6年後の1972年、『究極』を意味する『Z』を冠したモデルが生み出されました。「900 super4」、『Z1』の愛称で、いまもライダーの憧れを集めています。その伝統を引き継ぐのが「Z900RS」です。Z900RSは2018年のデビュー以来、ロングセラーとして多くのお客様にご支持いただいています。その理由は、伝統のZスタイリングに、現代のテクノロジーが融合することで生まれた、走る楽しさ・操る喜びにあると考えています」
続けて「本日、世界で初めてその新機種をお披露目いたします。デザインは、大きく変わっておりませんが、中身は大きく進歩しています。2026年モデルでは、電子制御スロットルバルブ、クルーズコントロール、IMUを活用したコーナリングABSやスマートフォン接続など、ライダーサポート機能を大きく拡充しました。また、お客様の好みに合わせた「SE」「CAFE」のバリエーションもご用意しています」など紹介した。
最後に「明治から令和へ。それぞれの時代に描いた未来に向けて、カワサキは革新の取り組みを続け、その歩みが伝統となってきました。カワサキに関わるすべての人の、喜びと幸せのために。これからもみなさまと共に『伝統と革新』を作ってまいります。Let the Good Times Roll.ありがとうございました」

        
        
        

