ホンダは、イタリア・ミラノで開催される二輪車の国際見本市「EICMA 2026」(ミラノショー、11月3~8日)で、コンセプトモデルや市販予定車、欧州向け2027年モデルの二輪車多数を発表した。世界初公開となる「CRF1150L Africa Twin」シリーズと「CBR1000RR-R FIREBLADE」シリーズをはじめ、二輪車として世界初となる電子制御過給機を搭載した「V3R 900 E-Compressor」の市販予定車などを披露。さらに、二輪車向け先進安全運転支援システムやAIを活用した音声操作、電動アシストマウンテンバイクなども提案し、既存の二輪車の進化に加え、次世代モビリティの可能性を幅広く示した。
注目されるのが、フルモデルチェンジした「CRF1150L Africa Twin」シリーズだ。従来の「Africa Twin」「Africa Twin Adventure Sports」に加え、オフロード性能をさらに追求した「Africa Twin Enduro Sports」を新たに設定。計3タイプの構成とした。
エンジンの排気量拡大による動力性能の向上に加え、各部の徹底した軽量化を実施。燃料タンクを分割し、一部をシート下に配置することで低重心化を図るなど、扱いやすさと車両全体のバランスを高めた。なかでも「CRF1150L Africa Twin Adventure Sports」には、ホンダの二輪車として初めて、新開発の先進安全運転支援システム「Honda SENSING RIDE」を搭載する。安全技術の高度化を大型二輪車にも展開する動きとして注目される。また、内燃機関(ICE)搭載アドベンチャーモデルのフラッグシップを示す新たなエンブレム「Honda Flagship WING」も採用した。

フルモデルチェンジした「CRF1150L Africa Twin」シリーズ
スーパースポーツでは「CBR1000RR-R FIREBLADE」シリーズをフルモデルチェンジし、世界初公開した。従来の「FIREBLADE」と「FIREBLADE SP」に加え、「FIREBLADE HRC WORKS EDITION」を新たに設定し、計3タイプを展開する。
新設計のアルミツインチューブフレームやスイングアームなど、車両全体の約75%に及ぶ部品を新規設計。サーキットでの競争力をさらに高めた。パワーユニットには、ホンダの量産二輪車として初めて2段可変エアファンネルを採用。こちらも内燃機関搭載スーパースポーツのフラッグシップとして「Honda Flagship WING」のエンブレムを掲げる。

「CBR1000RR-R FIREBLADE」シリーズをフルモデルチェンジ
一方、将来の技術開発を象徴するモデルとして出展するのが、市販予定車の「V3R 900 E-Compressor」だ。独自のV型3気筒エンジンに、二輪車として世界初となる電子制御過給機を組み合わせた。左右非対称の独創的なデザインに加え、チタン製の燃料タンクやエキゾーストパイプ、マフラーを採用するなど、先進技術と個性的な車体構成を特徴とする。
また、進化した「Honda RoadSync」を搭載し、直感的な操作を可能にするHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を採用。AIを活用した音声操作機能なども備え、エンジンや車体技術だけでなく、デジタル技術を取り込んだ利便性の向上も打ち出した。

市販予定車の「V3R 900 E-Compressor」
電動分野では、ホンダ初の電動アシストマウンテンバイク「Honda RN0」を世界初公開した。ハイエンド電動アシストマウンテンバイクメーカーのROTWILD社との共同開発モデルで、ホンダが二輪車開発で培ってきたノウハウと最新のe-MTB技術を融合。独自開発のカーボンモノコックフレームとガルアーム式スイングアームを採用し、安定性の高い車体と先進制御による電動アシストユニットを組み合わせた。従来の二輪車とは異なる領域にも、ホンダの車体開発技術を展開する姿勢を示している。
欧州向けの新モデルでは、125ccコミューター「ADV125」を導入する。欧州のA1免許で運転できるモデルで、「X-ADV」や「ADV350」が持つ個性的なデザインとアドベンチャースピリットをコンパクトな車体に凝縮した。エンジンには125ccの「eSP+」を採用し、俊敏なレスポンスと燃費性能を両立。新開発の5インチフルカラーTFTディスプレイや「Honda RoadSync」によるスマートフォン連携機能なども備える。実用性に加え、先進装備やデザイン性を重視する欧州の小排気量市場に向けた商品展開といえる。

125ccコミューター「ADV125」
さらに、欧州初公開となるミドルクラススポーツモデル「CBR500R FOUR」も披露した。4気筒エンジンモデルの伝統と最新技術を融合したモデルで、ホンダ独自のクラッチコントロール自動制御システム「Honda E-Clutch」を採用。スポーティーな走行性能とシンプルな操作性、高い汎用性を両立し、幅広いライダーに新たなライディング体験を提供する。

ミドルクラススポーツモデル「CBR500R FOUR」
電動二輪車の将来像を示すコンセプトモデル「EV OUTLIER Concept」も欧州で初公開した。2030年以降の二輪車の新しいあり方を提案するモデルで、既存車の延長線上ではなく、電動車ならではのレイアウト自由度を生かした設計が特徴。前後両輪にインホイールモーターを採用し、ダイナミックで低重心なスタイルを実現している。

コンセプトモデル「EV OUTLIER Concept」
このほか、9月にイタリア・ミラノで開催されたミラノ・ファッション・ウイークで公開した「Onitsuka Tiger Honda Mid Sports Concept」も出展する。ミドルクラススポーツモデルをベースに、オニツカタイガーの象徴的なカラーであるタイガーイエローを基調としたデザインを採用。車体両側面に黒のストライプを配し、ホイールにもタイガーイエローをアクセントとして取り入れた。ホンダとオニツカタイガーの両ブランドロゴを配置し、モーターサイクルとファッションの融合を表現した。
今回のEICMAでホンダが示したのは、既存の主力カテゴリーにおける商品力の強化だけではない。アドベンチャーやスーパースポーツのフラッグシップモデルを刷新する一方、電子制御過給機や先進安全支援システム、AIを活用した操作機能など、二輪車の付加価値を高める技術を積極的に提案した。さらに、電動アシストマウンテンバイクや次世代電動二輪車のコンセプトを通じて、二輪車技術の応用領域や将来のモビリティの可能性も示している。商品性能の向上に加え、安全性、操作性、デジタル技術、デザインといった複数の側面から二輪車の新たな価値を追求するホンダの方向性が表れた出展となった。



