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【特集・トップに訊く2023】ドゥカティジャパン/マッツ・リンドストレーム社長 「Raise The Bar」すべて基準をこれまで以上に引上げていく  正規販売網と高み目指す

【特集・トップに訊く2023】ドゥカティジャパン/マッツ・リンドストレーム社長 「Raise The Bar」すべて基準をこれまで以上に引上げていく  正規販売網と高み目指す

2023.02.27

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【特集・トップに訊く2023】ドゥカティジャパン/マッツ・リンドストレーム社長 「Raise The Bar」すべて基準をこれまで以上に引上げていく  正規販売網と高み目指す

昨年、国内の251㏄以上の小型二輪車の販売は、24年ぶりに10万台を超えた。需要が高まった市場を背景に、多くの車両メーカー販社が生産、入荷の遅延が影響し前年を割るメーカーもでた。ドゥカティジャパンも入荷遅れの影響を受けたが、今年の拡販に向けた踊り場の1年として販売ネットワークの質の向上のための準備に充てたといえそうだ。同社のマッツ・リンドストレーム社長が本サイトの取材で、バイク市場や今年の抱負を述べた。(取材:鈴木香)

 

――昨年のバイク市場を、どのように認識していますか。車両の入荷遅れによる計画や施策の変更は。
「世界市場全体で前年よりも拡大し、ドゥカティのグローバルでは6万1000台を超える記録的販売となったことは好ましいことです。ただ、イタリア本社工場からの車両出荷の本格的再開が第4四半期となったため、欧米のマーケットはこの恩恵に与ることができたが、日本は残念ながら輸送などのリードタイムの問題で、販売に結びつけることができませんでした。お客様をお待たせしていることを本当に申し訳なく思います。

 

現在、イタリア本社ではタイの車両生産工場のドゥカティモータータイランド社の活用に取り組んでおり、今年から『スーパースポーツ』『モンスター』『デザートX』といった主力車種を含め、合計15車種をタイ生産に切り替える計画です。

 

一方で、日本への入荷遅れにより新車の流通台数が少なかったことで、ドゥカティの中古車相場も上昇し、ディーラーでは値引き率の低下により車両販売の利益率が向上し、アフターサービスで収益が高まるという良い面もありました。また、商売の原点である『店頭在庫車両を売る』ということに向き合う良いきっかけとなり、店頭滞留日数が短くなり店頭在庫の鮮度が向上しました」

 

――販売ネットワークやディーラーへの取り組みについては。
「ドゥカティの製品に見合った価値を顧客接点となるディーラー店頭で提供出来るように、ハードウェアそしてソフトウェア両面でのアップグレードが必要と痛切に感じています。そのため、ドゥカティ本社は『Raise The Bar(全てにおいて基準をこれまで以上に引き上げていく)』というグローバル戦略を打ち出し、お客様が心地よくお過ごしいただけるよう、店舗についてはリニューアル、そしてドゥカティのブランドをお客様にお届けするセールススタッフには、ベーシックなトレーニングから店長向けのトレーニングまで幅広く提供しています。

 

また、ディーラークオリティの向上の一環で、メカニック向けトレーニング『デスモスペシャリスト』を弊社内に常設のトレーニングセンターで実施しています。メカニックに『ドゥカティテクニシャン』の称号を与えるキャリアパス制度を3ランクに分けて開催。第一段階のトレーニングセッションでは、一回のコース参加者を5名以下に限定し、計5日間におよぶトレーニングでドゥカティの基礎を学びます。昨年は計20名の参加者がありました。

 

メカニックはお客様満足度向上の大変重要な位置づけです。最初の新車販売はセールススタッフですが、2台目以降のお客様の乗り換えへはメカニックとお客様の関りが大きく左右します。ドゥカティはフォルクスワーゲングループの一員なので、四輪の販売店向けに設計された上質なトレーニングを提供するリソースと、そのノウハウがあります。ただ、顧客接点としては、二輪販売店は四輪販売店よりも圧倒的に優れており、オートバイ屋さんとしての良さはしっかり残しながら、四輪の優れたところは素直に学んで活かしていこうという考えです。

 

また、ディーラーネットワークは現在、全国に44拠点あります。今後も空白地域や地域の商圏規模を検討しながら販売網を拡大させていく予定です。ただ、拡大にあたり念頭に置いていることは、量を追求するのではなく「Raise The Bar」つまり質の向上をもって拡大を図りたいと考えます。

 

他方で、ストアの店舗が整いきれいになる半面、若者などのユーザーが販売店の敷居を高く感じて来店しづらくなっているという意見もうかがっています。この点は課題でフォローアップ策が必要と感じます」

 

取材に応じるドゥカティジャパンのリンドストレーム社長

 

――コロナで市場が変わり、ユーザーへの訴求、販売に至るアプローチは変わりましたか。
これまで以上に、より来店前にお客様が事前に情報を収集される傾向が強まっていると感じます。そのため、お客様へのコンタクトは絶えず改善してきました。特にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)はインパクトがあり、同時にウェブサイトでの強力な訴求も重要です。

 

私自身もドゥカティ関連のSNSやウェブは、こまめに確認するようにし、レスポンスしたり気になる投稿については改善を求めたりしています。ディーラーでもSNSを駆使して多面的なアプローチをユーザーに行ってもらうことができるようトレーニングを開催し、販売店評価項目の中にこれを組み入れたりして活動の継続した活性化と質の向上を図っています」

 

――今年の二輪車市場の見通しは。
「昨年は小型二輪車の市場が約21%拡大しましたが、今年は増加しても昨年ほどの伸びは見込めないのではないかと思います。だた、すでに社会が動き出し、多くのバイクユーザーが観光に出かけており、その動きは活発化しています。コロナ前の市場に比べ良い状況が継続するでしょう。市場は良い方向に向かっていると考えています。

 

我々については、車両の入荷が昨年のような状況から回復し、今年は入荷遅れの問題はほぼないと見込んでいます。新型モデルの導入も『ディアベルV4』『ムルティストラーダV4ラリー』『モンスターSP』『パニガーレV4R』『ストリートファイターV4』『ストリートファイターV4ランボルギーニ』『スクランブラー アイコン・ナイトシフト・フルスロットル』9モデルを発売する予定です。これにより、マーケットの伸び以上の大きな伸長を予測しています」

 

――楽しみのアピール、提供が重要になりますが、施策は。
「ドゥカティのお客様や、ドゥカティを検討さているお客様にお集まりいただき、ディーラーを含めて、楽しんでもらえるイベントを今年も行っていきます。弊社が主催するイベントは、試乗や安全運転、サーキット走行、アドベンチャーライディング講習などの各種イベントを、昨年に続いて開催します。

 

また、これも昨年スタートしたものですが、ドゥカティの世界観がよくあらわれています「ドゥカティ・ブランド・ナイト」というイベントです。ドゥカティの情熱、華やかさや煌びやかさといったことが参加者の方に体感いただけたと思います。

 

そして、販売店との協働イベントです。各地のローカルショーに出展される販売店をこれまで以上に支援していく予定です、イベントをオウンドメディアとして活用し、イベントにおけるブランド認知力を上げていきたいと考えます」

 

 

――ディーラーへの取り組みについては。
「先に挙げた『Raise The Bar』戦略に基づき、プレミアムセグメントからアッパープレミアムセグメントへ、ブランドの再ポジショニングを行います。このため4つのアクションフィールドを設けそこに集中し改善を進めていきます。4つとは製品、ネットワーク、ドゥカティスティ(ドゥカティライダー)、そしてブランドです。

 

製品については、成長セグメントであるデュアルビッグセグメントにおけるムルティストラーダV4のポジションの確立です。ユーザーに試乗してもらうことで車両の優位性を理解してもらいたいと思います。ディーラーなどでも様々なツーリング企画を実施し、私どもでもよりよく理解していただくために限定した参加者様でアドベンチャーライドのイベントを行いました。

 

また、製品のパーソナライゼーションもわれわれのようなブランドではキーになってくると思います。車両については『UNICA』や『Made To Order』といったカスタムプログラムの日本導入を現在準備中です。レーシングスーツのテーラーメイドプログラム『ス・ミズーラ』もあります。

 

2つ目のネットワークは、お客様からの販売店に対する満足度の向上です。店頭でドゥカティの世界が正しく展開されているか。また、ブランドのアンバサダーとして立ち振る舞われているかということに注力しています。3つ目のドゥカティスティとの絆の構築です。昨年度はDOC(ドゥカティ・オーナーズ・クラブ)が新たに3つ誕生し、今年もドゥカティの情熱を共有するファミリーのクラブが、さらに増える予定です。

 

4つ目のブランドですが、我々にはビジョンとして『最も魅力的なモーターサイクルブランドになる』ということと、ミッションとして『最高の品質、最高に美しいスタイル、ハイテクでパワフルなモーターサイクルによる類まれな体験を通じて、人々の生活を豊かにする』ということを掲げています。ディーラーも含めてすべての活動が、すべてこの原則に基づいて行われているのか、ということを常に考えてもらうことを求めています。

 

また、先ほども述べた通り、トレーニングは大切です。各ディーラーの技術力の向上に対するサポートは、テクニカルの面だけではなく、車両販売スキル、新製品などのプロダクト知識、アフターセールス商品販売の各分野で、レベルに合わせて様々なトレーニングをオンラインと対面の双方で実施していきます」

 

ツーリングはもとより、通勤でも毎日モーターサイクルに乗るリンドストレーム社長

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