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【特集】コロナ バイク流通にも後遺症   販売店に急速変化  淘汰と「小売りの根本」を突き付ける

【特集】コロナ バイク流通にも後遺症   販売店に急速変化  淘汰と「小売りの根本」を突き付ける

2022.09.05

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【特集】コロナ バイク流通にも後遺症   販売店に急速変化  淘汰と「小売りの根本」を突き付ける

新型コロナはバイクの販売にも後遺症を残す。コロナ以前から始まったバイクメーカー販社による専売店化、さらに新型コロナにより、バイク販売店にこれまでの在り方を根本から覆す大きな変化、さらに変化は約2年間で急速に加速したといえる。店舗では車両生産の遅延による入荷の遅れ、店頭在庫の減少など、ショールームそしてユーザーのバイクライフのフォローなど、本来の役割が突き付けられているといえそうだ。背景にはすでに起こっている人口と生産年齢の減少で、将来的にユーザーが減る中で車両メーカーや販売網が収益を確保するためには、組織も小さくなって効率よく、製品単価を上げざるを得ない。コロナはこうしたバイクの流通の変化を一層加速させたといえそうだ。

 

 

2010年以降、本格的に各車両メーカー販社はブランドの訴求強化やユーザーへのバイクライフの提供・支援の強化のため、相次いでメーカーブランドの専売店ネットワークの構築に向け、それまで以上に本腰を入れ走り出した。先には1991年より当時社長に就いた奥井俊史氏が率いるハーレーダビッドソンジャパンが、1990年代半ばより始めたブランドを統一した形で明確に打ち出した店舗展開、店舗の運営に至るまでのストアデザインプログラムが、日本で本格的に地に足をつけた形で、車両販売店のそれまでの「趣業」「私業」といった意識を抑え、確実にブランドビジネスとしての販売ネットワークを定着させたといえる。

 

 

当時からのハーレーダビッドソンジャパンの取り組みにより、販売店サイドへ大きく影響を与え、意識改革が進み、現在の国産各社の販社が進める専売店化への下地ができたといえる。ブランドの専売店であるディーラーネットワークでは各店舗で同一のブランドの世界観や製品、サービスを高いレベルですべてのユーザー、顧客へ平等に提供するというものだ。そうした当時からのハーレーダビッドソンジャパンとそのディーラーによって、現在、国産車各メーカー販社もいたってブランドの専売店化への取り組みが容易に進めやすくなったこともあり、各メーカー販社もブランドを訴求した専売店ネットワークへの取り組み強化が活発となった。

 

 

ただ、各国産メーカー販社もハーレーダビッドソンジャパンの真似をしたわけではない。1980年代には国産メーカーもホンダはウィング、ヤマハは当時からYSP、スズキがSBS、カワサキではグリーンといった販売チャネルを展開した。しかし、当時はメーカーからすると、販売店はパートナーというよりも「お客様」といった位置づけが強く、販売店側もそうした意識が強かったといえ、メーカーは外部資本となる販売店に対して思い描く販売ネットワークと店舗運営での施策などが浸透させることができなかった事が挙げられる。

 

 

戦後より日本経済、バイク業界も高度経済成長を経て拡大し、バブル経済を迎えた80年代、90年初頭にはバブル崩壊でバイク業界とバイク販売店も市場の成長と衰退を経験し生きながらえてきた。現在、国産各メーカー販社が展開する専売店ネットワークは、ブランドの訴求や世界観などを打ち出すためだけではないともいえる。販売環境も刻一刻と変わり続けている。特に販売環境を取り巻く日本国内の人口の減少も、各メーカーと販売店に変化を要求していといえる。

 

 

他方、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少し、総人口も2008年をピークに減少していることも注目されるところだ。総務省「国勢調査」による2015年の総人口は1億2520万人、このうち経済を回す15~64歳の生産年齢人口は7592万人となる。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計での総人口は、2030年には1億1662万人に減少、2060年には2010年と比べ32.3%減少し8674万人まで減少する見込み。生産年齢人口では2030年には6773万人、2060年には2010年比45.9%減少し4418万人にまで減少するとしている。

 

生産年齢人口が減少することは、バイクを買うことができるユーザーが、将来的に減るということだ。こうした販売環境からすると、将来的にバイク需要を伸ばすことは容易ではない。車両メーカー販社からすると、販売台数と収益の確保、少なくなる人材に対し人件費の上昇などで、いかに効率よく自社を運営していくかが課題となる。こうした背景も現在のメーカー専売化を進める必要性がうかがえる。メーカーの専売化はブランド訴求の一方で、効率的に流通である販売店ネットワーク構築に向けての取り組みとしても一石二鳥といえるだろう。【続く】(鈴木香)

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