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米ハーレーダビッドソン ツァイツCEO交代へ  第1四半期、減収・減益  北米・アジアの販売減が影響

米ハーレーダビッドソン ツァイツCEO交代へ  第1四半期、減収・減益  北米・アジアの販売減が影響

2025.05.22

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米ハーレーダビッドソン ツァイツCEO交代へ  第1四半期、減収・減益  北米・アジアの販売減が影響

米国ハーレーダビッドソンが「ワイヤー」の縺れがほぐれずにもがいている。同社は生産性の向上やディーラー在庫の削減、厳しい経済環境と関税環境などに対応し、販売拡大など取り組んでいる。だが今年の第1四半期での車両販売が前年同期比マイナスで、財務指標も前年同期を下回る。一方で、同社ヨッヘン・ツァイツCEOが退任する。同社は後任が決定するまでの間、ツァイツCEOが留任するとしている。

 

同社は4月、ツァイツCEOが2025年に後任が任命されることを条件に退任する意向を表明したとしている。ツァイツCEOは後任が決定するまでの間、CEOとして留任する。ツァイツCEOはこれまでの5年間、ハード・ワイヤー戦略を掲げ2021年からの5ヵ年計画の策定、ブランドの活性化、同社史上でも歴史に残る厳しい環境下で指揮を取ってきた。

 

ツァイツCEOは2020年の着任時に掲げた「トータル・リワイヤー」(すべての配線を見直す)の必要性、さらに指針として5カ年計画「ハード・ワイヤー」を掲げ大改革をスタートさせた。HDの立て直しでは、社内の構造や運用、戦略的な見直し、コア事業の利益の再活性化、製品モデルの見直しなど、複雑に絡まった配線をほどき直し、HDブランドと企業としての強みに焦点を当て、市場とHDがいつの間にかズレが生じた配線を、正しく再配線することに取り組んできた。

 

ツァイツCEO

 

製品ではそれまでの複雑化した製品構成やオペレーションなどで、グローバル事業全体で700におよぶポジションの削減を挙げた。製品開発ではユーザーの欲求に合わせた価値の高い製品の強化に取り組むため、それまでの計画車両を約30%合理化する一方で、既存のカテゴリー製品と新たな高いポテンシャルのセグメントへ投資するなどの調整や、新型車の発売時期も8月から需要が高まる春に変更した。

 

販売市場のリセットでは、潜在的なポテンシャルが高い北米やヨーロッパはもとより、日本を含む成長性が高いと判断するアジア太平洋地域の一部市場で集約などを進めてきた。

 

ツァイツCEOはHD社の以前は18年間、プーマの会長兼CEOを務めてきた。ただ、プーマの製品は売って完結するが、HDは売ってからがユーザーとの交流が始まり、販売の意味が大きく異なる。さらにプーマでは施策の浸透も容易な直営の一方で、HDは法人が異なるディーラーといった販売体制だ。製品を開発し生産、流通や販売の基本は同じでも、大きく異なる点が挙げられる。

 

特に販売流通体制では、外部資本による法人が異なるディーラーとあって、販売計画を直接ディーラーに落としても、各ディーラーにより経営状態や活動状況も異なり足並みを揃えて計画を進めることは容易ではなかったのではないかと推測できる。

 

イベント展開もHDは製品を売って完結する製品とは異なる。販売後にはイベントでユーザーに楽しんでもらう取り組みが重要であり、長期にわたりHDのライフスタイル、夢をかなえる取り組みの提供が必要になる。製品であることは同じであっても、こうした異なる分野でツァイツCEOであっても手をお焼いたのではないだろうか。

 

◆第1四半期の連結業績、減収・減益

同社は5月1日、今年の第1四半期の連結業績を発表。この中で今年1~3月の世界市場でのモーターサイクルの販売台数は、前年同期の3万9400台よりも21%減少し3万1000台であった。特に北米は同24%減少の2万0900台、日本を含むアジア太平洋市場でも同28%の減少し4万4000台で大きく伸び悩む。

 

販売は予想を下回ったものの、それでも連結の業績は多くの分野で予想を上回ったとしている。連結での売上収益は前年同期比23%減少の13億2900万ドル、営業利益が同39%減少の1億6000万ドル、HDI(Harley-Davidson, Inc.)に帰属する純利益では同43%減少の1億3300万ドルであった。売上収益の23%減少は主にモーターサイクルのHDMC(ハーレーダビッドソン・モーター・カンパニー)の収益が前年同期14億7600万ドルよりも27%減少の10億8200万ドル、営業利益でも同51%減少の1億1600万ドルが大きく影響した。

 

モーターサイクルの出荷台数は、前年同期比33%減少の3万8600台で、ほぼ予想通りであったが、予想以上に需要が弱かったことも影響したとしたとする。主に卸売出荷の計画的な減少と為替の影響、世界的な価格設定およびネットインセンティブの好調によって一部相殺した。部品・アクセサリーの売上高は14%減少し、アパレルの売上高はディーラー店舗への顧客来店数の減少により11%減少したなどとしている。

 

一方、HDFS(ファイナンシャル・サービス)の営業利益が同19%増加したことで一部相殺された。電動車のLiveWire部門の営業損失は900万ドル改善し、前年同期比で32%減少した。第1四半期の連結営業利益率は12%で、前年同期の15%から減少した。

 

2025年の財務見通しでは、世界的な関税情勢およびマクロ経済状況の不確実性により、今年2月5日に当初の通期財務見通しを撤回している。

 

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