トライアンフモーターサイクルズは昨年、日本市場で過去最高の3397台を販売した。日本法人トライアンフモーターサイクルズジャパンの大貫陽介・社長は本サイトの取材に応じ、今年の販売は昨年を超える見込みを示唆した。販売記録を更新するために今年はどのような施策に打ってでるのか聞いた。
――今年の市場を、どの様に視ていますか。
「昨年は各社で需要が伸びました。一方で社会全体が新型コロナに慣れてきて政府も今年5月の連休明けには5類として緩和され、新型コロナ前の社会に戻りつつある起点の年と捉えています。ただ、いったん新型コロナで高まった二輪車への需要が、一気にコロナ前に戻るわけではなく、需要は多少弱まり緩やかに落ち着いてくるものとみています」
――今年の車両などの製品の入荷は計画通りに進められますか。
「2022年でも各社で半導体の不足により入荷が予定通り進まなかったようですが、私どもでも最も販売に力を入れたい時期に車両の供給が全て予定通りとは進みませんでしたが、製品不足は徐々に解消し順調な入荷が始まっています。私どもの年度末は6月で、すでに後半期に入っておりこれからが重要な時期になります。
トライアンフは日本での年間販売台数の壁として2000台が長きにわたり存在していましたが、2000台を超えた以降は順調に販売が伸び、昨年まで2年にわたり3000台も超えてきました。カレンダーイヤーでは昨年、惜しくも3400台には届かなかったものの、3397台まで伸びました。今年は今後の入荷ならびに春期に向けて新型車を投入します。
新型車の投入は2月25日にストリートトリプルRS、3月にはストリートトリプルRを発売。価格的ではかなり踏み込んだ設定で予定しています。昨今、各社は原材料やエネルギー、輸送コストなどの高騰により、新型機種の販売価格を引き上げる傾向にありますが、いま挙げた機種の販売価格は品質や機能面と価格的にも競争力ある設定で発売します」
――原材料や輸送コストなどが高騰する中で、価格を抑えることは厳しいのでは。
「新型コロナによる影響で一時期は輸送コンテナ不足などによりコストが上昇しましたが、現在はコンテナ不足や高騰のピークは越えたので、多面的に調整して何とか価格を抑えて発売できます。こうした戦略車の発売もあって、今年は4000台を超える販売を見込んでいます」
――4000台超えに向けては、どの様な取り組みを展開していきますか。
「もっとも注力する分野は正規販売店のネットワークです。トライアンフの正規販売店は今年1月時点で全国に28拠点で、全国の需要からみると圧倒的に販売店網としては少ない状態です。ユーザーの声を聞いてもニーズがある地域にもかかわらず販売拠点が無いといった点が挙げられます。販売店網については急ピッチで進めています。
今後春に向けて、現在3拠点の開設予定に目処がついたところです。今年の夏までには32拠点ほどに拡大予定でいます。さらに長期的には全国に50拠点体制にしたいと考えています。
また、拠点数のほかにもネットワーク自体の体制充実も、正規販売店への各種トレーニングやCS(顧客満足)度向上なども含めて力を入れていきたいと考えています。そうしたことでもトライアンフの文化をPRできればと思います。
現在の正規販売店の皆様は非常に協力的で、施策に対して理解してくれますので、スピードが速く進めやすいです。我々のブランドはクラシックモデルが強みですが、例年5月、トライアンフが世界の各地域でクラシックなどのスーツを身に纏いクラシックバイクでツーリングするDGR(Distinguished Gentleman’s Ride)という男性の健康、前立腺がん患者のためのチャリティ基金活動を実施しています。
今年もスポンサーとして活動。日本でもこの活動に協力しています。これまでDGRは日本で1ヵ所での開催でしたが、今後はディーラーを起点にして特定の開催地域を各地に増やしていきます。こうした活動でトライアンフとしての社会貢献、クラシックの文化とイベント開催として同時に盛り上げていきたいと考えています。
イベントではアドベンチャーでも、昨年はアドベンチャー・エクスペリエンスを開催して、タイガー1200の新型発売に合わせて実施。お客様にアドベンチャーやオフロードの体験走行を楽しんでもらうイベントを日本の東西2カ所で開催。今年もアドベンチャー・エクスペリエンスを開催するほか、春にはSSTR 2023にも参加してユーザーと走る喜びが共有できればと考えています。
3つ目の重要分野としては、ユーザーとのタッチポイントの創出です。先に挙げたイベントなどでお客様により近い存在になりたいと考えています。
昨年発売した新型タイガー1200は軽量化され、これにより乗り換えが進み一気に販売が伸びました。ただ、トライアンフのアドベンチャー市場でのポジションが、目指す位置には届いていませんので今後も伸ばせる余地があります。ユーザーへの体験機会の提供としてはディーラーレベルでレンタルを活用する拠点もありますが、将来的にはメーカーの施策として取り組む予定でいます。
私どものお客様は40歳代が多くなっていますが、例えば、製品では660㏄モデルのトライデントでは、より若年層の新規のお客様が増えており、製品でのタッチポイントになっています。また、購入していただいたお客様と長期にわたって関係していく取り組みや新規で購入して頂くお客様などへも、徐々に施策をアップデートしています。
また、すでにモーターサイクルに興味があるユーザーを飛び越えた形で、車両をはじめアパレル製品でのクロージングなどでも枠組みを超えたところで、新規のユーザー獲得の活動ができないかを模索しているところです」
――近年、店舗当たりの販売台数は平均120台以上で推移。充実しているアパレルでも収益が拡大しているのでは。
「車両の販売増加スピードよりも、クロージング製品の収益増加の方も加速しています。昨年は前年比で約40%増加しています。要因はDGR、MOTO2といった企画ごとに特別なクロージング製品を発売しており、こうした製品が貢献しています。
同時に訴求活動でもSNSなどを効果的に使い、訴求する取り組みを行うほか、正規販売店の店舗でも店内での製品の陳列でビジュアルマーチャンダイズ(VM)など、これまでに手薄であった分野に着手し今後も充実させていく予定です。