近年、オートバイ販売店でのアフターサービスにおける工賃が上昇している。多くのバイクユーザーは既に承知のことであろう。約20年前に比べメーカー専売店では1時当たりの工賃は約50%上昇。いまや二輪メーカー専売店の工賃は、国産大手の四輪ディーラーをも上回る状況だ。
車両メーカーの販社各社が現在の様なブランドの専売化を進めた90年代後半にハーレーダビッドソンジャパンが本格的にスタートし、やがてホンダモーターサイクルジャパンが当初の「ホンダドリーム」、ヤマハ発動機販売が再編した「YSP」、そしてカワサキモータースジャパンが2016年12月プロトタイプの「カワサキプラザ」を大阪に開設し、2017年4月から本格的に全国展開を開始。
約20年前、ハーレーダビッドソンジャパンでもアフターサービスにおける1時間当たりの工賃は、全国のディーラーで約1万円から1万2000円が中心であった。各地域の経済状況や賃金格差、物価の違いにより一律で統一するのが困難であった。
国産メーカーの販売店では現在の様なメーカー系の販売ディーラーの展開が各社で始まる以前は、ホンダプロスなどの販売店では1時間当たりの税別工賃が8000円であった。約20年前は、ホンダの取扱店に合わせて取り扱いメーカー関係なしに、多くの販売店が横並びで1時間当たり8000円前後であった。
しかし、現在は各メーカーの専売店、地域差、ディーラー運営会社の違いにより多少の価格格差があるものの、あるホンダドリームでは1時間当たり税別1万1000円となっている。ヤマハもあるYSPでは1万2000円。カワサキでは現在のカワサキプラザで1時間当たりの工賃が1万3000円に設定されている。このほかに主要な輸入車の正規ディーラーでも1万から1万2000円前後とみられる。
一方で、現在、国産四輪の某トヨタのディーラーで1時間当たりの工賃を尋ねたところ1万円と語っていた。いまや二輪ディーラーが四輪ディーラーの工賃を上回る状態にある。ただし、二輪ディーラーは単純に工賃を上げているのではない。各社専売店ディーラーとしてメーカーの看板を背負って販売してもらうために、ディーラーのサービススタッフの育成や技術、ノウハウの向上に努めている。加えて、各ディーラーでは店舗独自に工賃以上の各種サービスなどの提供に努めている傾向も強く、工賃が一概に高いとはいえない。
最も二輪は趣味性が四輪以上に強く、市場は四輪に比べ小さく四輪を超える工賃設定でなければ経営が成り立ちにくい。さらに、人口減少社会にあってはなおさらであろう。政府も昨今では物価上昇に対する賃金上昇の低さから、経済界に賃金の上昇を求めている。
こうした二輪業界を取り巻く環境も賃金の上昇ムードが高まる中で、二輪販売店の多くがこれまで企業組織というよりも、私業であったこともあり従業員賃金が社会全体に比べ低かったこともある。ようやく他の業界レベルに向かいつつある。今後は企業内、とりわけ販売店の経営者は従業員への賃上げが求められてくるのであろう。