ヤマハ発動機はスポーツヘリテージ「XSR900 GP」が、5月の発売から約1か月で、販売店からの受注1000台を超えたと発表した。期待や想定を大きく超えた市場の反響を得たとしている。
同モデルは1980年代の世界グランプリを席巻したヤマハのレーシングマシンのYZR500をオマージュしたスポーツヘリテージの新製品として5月20日に発売したもの。発売当時の販売計画では、1年間で1000台としていたが、約1カ月間で販売店からの受注ベースで1000台を超えた。
“The Embodiment of Yamaha Racing History (ヤマハレースヒストリーの体現者)”をコンセプトに「XSR900」をベースとして開発、ロードレース世界最高峰でのYAMAHAの足跡とスピリッツを表現した。水冷・4ストローク・DOHC・直列3気筒888cm³エンジンをCFアルミダイキャストフレームに搭載する。
1980年代の当時、日本市場はバイク市場で最高の販売を上げ、二輪車免許の取得者数も頂上を迎えた時代であった。各メーカーの威信を賭けたGPレースの人気も高く、レーシングマシンを模したレーサーレプリカの市販車が市場を牽引するなど、二輪車需要にも大きな影響を与えた。
新製品の「XSR900 GP」は、昨秋の「ジャパンモビリティショー」の開催で初公開したもの。同モデルの開発を担当したPF車両開発統括部の橋本直親・開発プロジェクトリーダーは「やりきれば伝わるし、思いを込めれば刺さるということを実感させてもらっています。(開発プロジェクトの)みんなの思いが、お客さまに届いたことが何より嬉しく、ありがたいですね」と述べる。「企画や開発の段階から、一定層にはご支持いただけるだろうという期待や想定はありましたが、正直、これほどの反響をいただけるとは思い描いていませんでした」と振り返る。
ただ、狙ったのはレーサーレプリカや時代の再現ではないとしている。橋本氏は「モチーフとなったYZR500にヤマハのヘリテージを感じたり、純粋にカッコ良さを感じた若い世代のエンジニアたちが、放課後活動のような取り組みをスタートさせたことがきっかけ。彼ら有志は、企業ミュージアム『コミュニケーションプラザ』に通って往年のレーシングマシンの造形や機能部品等を研究し、また部品を試作しては試行錯誤するなど活動を加速させていきた」などと、自発的な開発であったことを挙げる。
その結果、各種電子デバイスなど先進技術が詰まった「XSR900」に、往年のマシンに敬意を払いながら、同時に現代的な解釈も加えて外観・機能をパッケージするという企画に昇華。目指したのは、「ノスタル
ジーを超越した新たな魅力の創造」であったことを明かしている。
公開の場となった「ジャパンモビリティショー」では、肉抜き加工が施されたステーなどを見つけては懐かしそうに顔をほころばせるベテランライダーに加え、想定意外な反応もあり「例えば“かわいい”という評価がその一つ。大胆な赤と白の塗分けや、外装の丸みを帯びたフィニッシュは往年のレースシーンのアイコンでもありますが、その記憶を持たない世代にはまるで見え方が違うようです」と世代を超え反響を得たとしている。
橋本氏は「44歳の私が、ギリギリ、時代の残像を持っている世代。私より若い人の目にどう映っているのか、もう少し詳しく知りたい」と、新たな視点で販売動向を見守っていきたいとしている。