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【販売店革新】ショールーム「体感の場」へ  BMW Motorrad  新CIスタート  「ファイヤープレイス(焚火)」で交流

【販売店革新】ショールーム「体感の場」へ  BMW Motorrad  新CIスタート  「ファイヤープレイス(焚火)」で交流

2024.12.28

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【販売店革新】ショールーム「体感の場」へ  BMW Motorrad  新CIスタート  「ファイヤープレイス(焚火)」で交流

ビー・エム・ダブリュー(BMW)のモーターサイクルBMW Motorradは、ディーラーの新たなショールームCI(コーポレート・アイデンティティ)の展開を始めた。新たなショールームCIでは「ファイヤープレイス(焚火)」というコンセプトを設定。新CIやファイヤ―プレイス設置の背景や狙いなどについて、同社のカスタマーサポートの難波広シニア・マネージャー(SM)に聞いた。さらに同コンセプトに基づく新CIを国内で初めて導入し、11月14日に「BMW Motorrad Koshigaya」を開店した㈱原サイクル(埼玉県越谷市)の原豪志・社長に、ファイヤープレイスなどへの期待について取材した。

 

新たなショールームCIはドイツ本社で設定され、世界各国のディーラー向けに展開される。ディーラーが果たすべき機能や役割、機能に加え、顧客が求めているコトを根本的に見直すための取り組みとしている。難波SMは「これまでのショールーム“見せる場・販売の場”の要素が強かったが、新たなCIコンセプトではお客様の購買主体の場を、ブランドを体験・体感する場にシフトさせ、“ショールーム”から“フィールルーム”に昇華させるために再設定したもの」と述べ、これまでのCIの発展形ではなく、新しいディーラー機能の刷新、深化に取り組む。

 

根本的なCI見直しの背景としては「社会全体でデジタル化が進み、オンラインによる製品やサービスの購買行動が勢いを見せる一方で、実物の製品を見たい・体験・体感したいといったお客様の欲求の高まりといった時代変化」を挙げる。特に同社のようなプレミアムで比較的に高額な製品ほど「ユーザーからの期待が高く、今後一層に体験・体感に基づくロイヤリティの醸成が店舗においてはポイントになります」とリアル店舗での重要性を強調する。

 

BMW Motorradカスタマーサポート担当の難波シニア・マネージャー

 

これまでの店舗の外観はホワイトやグレーを基調としてきたが、新CIでは店舗の外観はダークグレーに変更し、建物の外観を見た瞬間からユーザーのわくわく感、期待感を持ってもらえるとしている。店内も同様にこれまでのホワイトを中心としたカラーから、ダークグレー・ダークブラウンといった色調に変更し、レンガ、コンクリートなどといった素材を取り入れ「落ち着いた重厚感ある空間、演出に大きく変えています」と難波SMは述べる。

 

さらに新CIでは「“ファイヤープレイス(焚火)”というコンセプトを取り入れました。ファイヤープレイスは、気心が知れた友人同士が、焚火を囲んで語り合う場をイメージしており、コミュニケーション、交流の象徴となります。同じ情熱を持った友人同士がその情熱を共有する場のシンボルとして、ファイヤープレイスを模した構造物を設置し、新CIのコンセプトを具現化しています」などと、店内に交流の場を設けていく。

 

 

ファイヤープレイスを囲み、交流のほか商談もできる(BMW Motorrad koshigaya)

 

このファイヤープレイスは、高さ約1.5mほどで縦に1本ずつの電飾はレッドやオレンジ、イエローと炎が揺らめくように変化。さらに焚火の“パチパチ”といった音を奏でる。

 

一方で、ファイヤープレイスは、交流や語り合う場のほかに、時には商談スペースとして落ち着いた雰囲気の中でじっくり商談などの空間としての活用もできるなどと、利用機会に広がりを強調する。

 

モーターサイクルは趣味の分野が占める割合が多く、予てよりバイク販売店では同じ趣味を持つ古巣の常連客のたまり場としての要素が色濃く続いており、今なおそうした販売店も少なくない。常連顧客は販売店にとって歓迎できる一方で、新規のユーザーや若年層などが入店をためらうといった懸念も一般的には聞かれる。ファイヤープレイスの展開では、そうした懸念や対応については、どのように考えているのか。

 

難波SMは「そういった懸念が全くなかったというわけではない」としながらも、「実際は製品構成をはじめ、店舗スタッフの顧客対応、さらに新CIによる店内の落ち着いた空間、現代的なバーカウンターの設置といった演出などから、一般的な古い店舗にあるたまり場的な雰囲気はまったくない」と強調する。

 

同社では今後、基本的には新CI、ファイヤープレイスを日本の国土や土地価格に合わせて柔軟にディーラーで導入していく考えだ。新CIでの店舗構成要素、基準について難波SMは「コミュニティエリアであるファイヤープレイスを中心に、モデルセグメントごとに車両を展示していく」とし、店舗の面積により各コーナーやスペースの構成、来店客の店内移動の導線もについて柔軟に対応していく考え。

 

 

「多くの来店ユーザーは実物の製品に触れてみたい、試乗したい、製品を体験・体感し、その上で購入を検討するといった期待を店舗に対して持っています。そうした高い期待を持って来店したお客様に、最初のコンタクトから購入、アフターサービスに至るまで、一貫したホスピタリティを持ってお客様のバイクライフを支えることが今後店舗には求められ、その一連のブランドを体験・体感していただくための活動の中心的な機能を果たす場として店舗は変わっていかなければなりません」と、今後店舗に求められる方向性を挙げる。

 

難波BSは「ドイツ本社では『世界で最も求められるブランドであり続ける』をビジョンに掲げています。新CIコンセプトであるファイヤープレイスは、このビジョンを達成していくための一つの柱として、お客様との直接的な接点である店舗においてBMW Motorradブランドに触れ、体験・体感し、ブランドロイヤリティを高めていただくための取り組みです」との考えを述べる。

 

「商談の場としても接客」 BMW Motorrad koshigaya/原社長

一方、11月14日に新CIとファイヤープレイスを日本で初めて導入した埼玉の「BMW Motorrad koshigaya」の原社長は、開店より約1ヵ月が経過し、ファイヤープレイスの設置について「初めはどうなるものかと思っていたが、商談の仕方が大きく変わった」とその効果を強調する。「商談の場として、ファイヤープレイスを囲みながらお客様を接客できます」としており、すでに数十台の相談が購買につながっているとしている。

 

11月14日に開店させた埼玉の「BMW Motorrad koshigaya」

 

「以前の店舗では、商談スペースなどが手狭であったたことで、東北や北陸地方などの遠方から時間をかけて来店いただいても、くつろいで頂くスペースがなかった」と、新店舗でのスペースの広さとファイヤープレイスでの落ち着いた空間でくつろいでもらえ、じっくりとブランドと店舗の体験を提供できるなどと述べる。

 

同店舗は2階建てで、延べ床面積が345㎡。1階の店内入り口正面には、同店の主力である新型のR1300GSシリーズが来客を迎える。1階はセグメントごとに新型モデルやライダーズギアとウェア類のガーメントを展示。ファイヤープレイスのスペースには飲料を提供するカウンターバーを設置。2階は通常は新型車などの展示のほかに、パーティなどのイベントスペースとしても利用できるようにしたのが特徴。店舗の外観では立地が交差点の角地のため、交差点に面する店舗のショーウィンドーの角スペースにファイヤープレイスを設置しており、夕刻以降の時間帯には街頭よりファイヤープレイスのオブジェがひときわ目を引く。

 

「BMW Motorrad koshigaya」の店内入り口正面

 

「BMW Motorrad koshigaya」の2階は小イベントもできるスペースを確保

 

また、原社長は「以前の店舗では通りがかりの来店者にも応対していたが、新店舗では外観から店内に至るまで一貫性を持ったコンセプトの明確化により、入店されるお客様のほとんどが目的を持って来店されることで、仕事の効率性が高まり、来店から購入につながる確率も格段に高まりました」と予想を超える効果に、驚く表情を見せる。

 

夕刻は街頭から、ひと際ファイヤープレイスが目を引く(BMW Motorrad koshigaya)

 

◆ブランド専売店、一段と革新へ

モーターサイクルにおける現在のメーカー各社によるブランド専売店とネットワーク化が始まって約30年近くが経過する。単に箱モノとして統一した店舗にとどまらず、モーターサイクルも小売業として、比較的に高額・プレミアム製品の提供の場、メーカーやブランドからのメッセージ・世界観発信の場、そして売り場から「買い場」などと進化と深化してきた。

 

しかし、BMW Motorradの新たなショールームCIは、これまでのショールームのあり方を一段と深化させるものといえる。ブランドで統一させた店舗、ショールームだけの時代は終焉を迎えていることを示唆する。デジタル化が進む一方で、デジタルでは不可能なリアルな店舗の在り方が一層重要視されてきているといえそうだ。

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