今年2月に入り、オートバイ販売店組織の協同組合「AJ」の各地域の組合の総会開催が続いている。AJ全国(全国オートバイ組合連合会)大村直幸・会長は全国各地で開催される総会に出席し、AJの取り組みや成果、存在意義などを取り上げユーザーやオートバイ販売店にとってAJ活動が重要であることを述べている。
3月22日にはAJ東京(東京オートバイ協同組合)の総会に来賓として出席した大村会長は、あいさつでAJの活動や存在意義を提唱する。あいさつの中で大村会長は、昨年はETC車載器購入助成キャンペーンがあった1月27日~6月末までの期間に実施されたことを取り上げ、スタートから期限の6月末までの期間に24万台に達するとキャンペーンが終了されることが公になっていた。
しかし、実際はキャンペーン期間中の5月中旬にAJの事務局に政府の担当課より連絡があり、キャンペーン期限の6月末を待たずに上限の24万台に達することで「多少早めに(キャンペーンを)止めさせてほしい」といった内容の連絡が入ったことを明かした。
こうした連絡が政府よりAJにきたことについては、AJの存在意義や地位が高まったということで大村会長は「嬉しくもある」が、その内容については一概に喜べないとする「考え深いところがある」と心の内を明かした。
そもそもETC車載器のオートバイへの導入については、担当省はスタートする時点での試験運用を行う際に、輸入車メーカーを含む各メーカーはじめ販売大手の企業にも依頼したものの、最終的にはAJにETCの試験運用の案件がまわりまわってきたとした。これを引き受けたAJは関東、関西、中部地区でETCの試験運用に協力してきた経緯を挙げている。
「当時、同省ではAJの存在を認識していなかったということだ」とした。全くAJの存在を知らなかったにもかかわらず、今回のETC車載器の助成キャンペーンの終了についてのうかがいの連絡が真っ先にAJもらえたということについては「AJにとって大きな意味がある。メーカーでもなくAJの存在が政府や国に認められたということだ」などと、政府に対するAJへの理解、存在がますます高まっていることを強調した。
このできごとについて大村会長が考え深いとするところは、歴代の吉田純一・前会長をはじめ、顧問で先ごろ逝去した森田伊活氏、各組合の役員らのこれまでの尽力、苦労が実を結んだ瞬間でもあるからだ。会長就任から大村氏は連日続く各地方の組合総会をはじめ、関係省庁などへの陳情や会議で、地元の北海道の自社店舗を一週間のうちほとんどを留守にして飛び回るほど労力を注いできた。
さらに大村会長は、ETC車載器購入助成キャンペーンの早々の中止のうかがい連絡を受けたAJでは「中止は受けられるものではない」とし、当初の6月末を待たずにして24万台に達成したものの、AJの関係省庁への働きかけで6月末日まで延長された経緯を明かした。この結果キャンペーンでは43万台のETC車載器が助成対象へと拡大したと述べている。
こうしたETCをはじめ、ユーザー向けのクレジットカードであるクラブAJカードでも、各地域のオートバイ組合の活動の大きな原資になっていることを指摘。この原資によりAJはユーザーのバイクライフやオートバイ環境の整備への活動が行え、その活動結果がユーザーに還元していることを強調する。
さらに大村会長はAJ茨城を取り上げ、同組合は27人の組織で、全国の各地域のAJに比べ組合員が少ない組織だが、266件のクラブAJカードの新規加入者を獲得し全国のAJトップとなっているとし、AJ茨城の貢献を称賛している。同時にクラブAJカードへの取り組みを呼びかけた。
また、沖縄のバイクの通行帯が右折困難な法規制が続いていることについても取り上げ「一昨年に続いて昨年も規制緩和が拡大した」ことにも言及。また、沖縄もECTを対象とした高速道路利用料金の定額プランが実施されたことについて、AJと活動を進めて政府が理解してくれたこともあっての結果であることを挙げた。
高速道路の定額プランは走行距離100㎞超えが対象で、沖縄では100㎞を超える高速道路がない地域。こうした沖縄でも同プランの対象にできたことや、さらにはETC車載器の普及にも貢献しているなど、AJの存在と政府への働きかけができる組織に成長したことを強調する。
加えて、現在拡大している電動のキックボードなどについては、今後、普及にともない駐車スペースの問題が拡大してくることを指摘した。さらに、新たな原付車の区分についても取り上げ、大村会長就任間もない2017年、当時、排気ガス規制の問題で50㏄の生産は2022年10月までとしていたが、担当省庁に延期を申し出てことで、50㏄原付一種の生産が2025年までの期間に延期されたことも取り上げた。
大村会長は「この件について申し出をしていなければ、すでに原付一種の新車は現在、在庫限りの販売」にとどまり、多くのユーザーが日常の移動手段を失うと同時に、二輪車販売店も商材が減っていたことを強調する。
当然、いま取り組んでいる原付一・二種の区分変更により原付一種の免許保有者が、区分変更により原付二種の車両に乗ることができるように働きかけている案件も「発生してこなかった話」と強く指摘する。
また、AJの組織拡大にも触れ「3月7日にAJ東北が設立され、47都道府県のうち40都道府県でAJが存在する形になる。3月14日にはAJ三重も設立され、滋賀県は昨年11月にAJ京都と統合、近いうちに和歌山もAJ大阪と統合」が実現するとした。「益々我々AJの組織が政府への中枢に届くようになる」とAJの政府に対する存在を強調。
今後も困難な課題に直面するとしたうえで、各地域のAJ組合員、個々の組合活動での協力が根源になることを強調し組合員らに協力をよびかけている。
なお、AJは二輪車の健全な普及を図り、もって交通社会の安全福祉に寄与し、業界の秩序と倫理を確立し、顧客及び社会に対する信頼と責任を果たし、オートバイ業界の健全な発展と社会的地位の向上をめざしているもの。ライダーを取り巻く環境整備などに取り組んでいる。